京都教育大生による集団準強姦事件で、大学側が会見で「公然わいせつ」と考えていると明かして物議を醸している。司法関係者も、加害者が複数いる状況の認識が誤っていると首をひねる。警察に届けなかったことにも疑問が出ているが、大学側は、その理由などを「教育的配慮」と繰り返している。
記者との激しい応酬、学長会見がなんと4時間
学長のお詫びコメント
今回の事件では、京都教育大の学長会見がなんと4時間ほどにも及んだ。それも、記者との激しい応酬に多くの時間が費やされたのだ。
京都府警が2009年6月1日に発表した後の記者会見。記者から「具体的に示して下さい」「納得しませんよ」と突っ込まれると、寺田光世学長は、
「教育的配慮です。これ以上、申し上げられません」
報道によると、寺田学長は、「教育的配慮」という言葉を会見で20回ほども使ったという。
この事件では、同大の21~25歳までの男子学生6人が、2月25日夜に酒にかなり酔っていた同大の女子学生(当時19歳)を居酒屋の空き室に連れ込んで性的暴行を加えたとして、集団準強姦の疑いで逮捕された。1人が容疑を認め、3人が合意だったとし、2人が見ていただけと主張している。約90人で卒業生を送る会を開いた後だったといい、ほかに男子学生3人が見ていたと報じられている。
大学では、3月3日に事件を知りながら、これまで警察への通報や学生処分の公表をしていなかった。寺田学長は会見では、いずれも教育的配慮を強調。捜査上の影響や自殺の懸念などを理由に、当初は処分内容も明かさなかった。
さらに、今回の事件について、現在も「公然わいせつ」と考えているとまで言ったのだ。学生に事情聴取したというが、なぜそう認定したのかは明らかにしていない。
大澤孝征弁護士「警察に通告すべき」
大学が主張する「公然わいせつ」説について、検事出身の大澤孝征弁護士は、こう指摘する。
「複数の異性との性交渉は、通常は被害者に同意がないというのが常識です。被害者が黙っていたという弁解も通じないでしょう。この事件では、大学側は、認識が誤っていたとしか言いようがありませんね」
また、公然わいせつも集団準強姦も親告罪ではないため、大澤弁護士は、大学が警察に届けなかったことに疑問を示す。「公務員ならば、通告義務があります。ことは犯罪なので、通告しないのは問題でしょう」
もっとも、こうしたケースでも被害者告訴が原則だという。
「女性が恥ずかしい場合もあります。本人の意向を無視するわけにはいきません」
今回の事件では、被害者の女子学生が4月4日に警察に告訴しているが、当初からそうしたかったかは分かっていない。しかし、大澤弁護士はこう言う。
「現実に告訴しているわけですから、被害者が告訴を求めていたと考えると、大学側の認定が甘いのでは。教育的配慮も分からなくはありませんが、被害者の意向を確認して、やはり通告するべきだったでしょう」
(追記:京都地検は2009年6月26日、6人全員を不起訴処分とした。)