地域の中小零細企業向けの金融機関である「信用組合」が消える可能性が出てきた。バブル崩壊後の金融危機のときに相次いだ経営破たんや合併を経て、信組は162まで減った(2009年6月1日現在)。経営基盤が脆弱なので不良債権処理などに耐えられないのが主な原因だが、おなじ協同組織金融機関の「信用金庫」に業態を一つにしてしまう案が浮上している。
全信組連を介して山梨県民信組に資本注入か
中小企業金融の一角を担ってきた「信用組合」の経営が再び危うくなってきた。原因は世界的な金融危機で保有有価証券の評価損が膨らんだことと、地域の融資先企業の経営が悪化して不良債権が増えてきたことがある。
こうした背景から、信組業界にも改正金融機能強化法に基づく公的資金の資本注入を申請するところが現れた。山梨県民信用組合が、信組業界の親機関である全国信用協同組合連合会(全信組連)に資本支援を要請。国が全信組連を介して山梨県民信組に資本注入する手法が有力視されている。決まれば、信組業界への公的資金の注入は初めてとなる。
全信組連によると、「山梨県民から当方への資本支援の要請はありました。公的資金の注入方法については、金融庁を含めた3者で協議していきます」と話している。
山梨県民信組は09年3月期も最終赤字で、これで5期連続。自己資本比率は4.06%と健全性を示す基準ギリギリで、資本支援なくして生き残れない。
一方、全信組連はすでに、過去2度にわたって同信組に128億円を資本支援している。大東京信用組合や大分県信用組合など全信組連が資本支援する個別信組は他にもあって、このまま追加支援を続けると全信組連自身の財務内容が悪化する恐れがある。これまでの業界内支援が限界に達して、とにかく公的資金で「応急手当」をするほか生き残る道がないようだ。