講談社が運営するポータルサイト「MouRa(モウラ)」の編集部が解散したことが明らかになった。同サイトに掲載された記事をきっかけにしたベストセラーもいくつか誕生したものの、結局はビジネスモデルを構築できず、頓挫した形だ。サイト自体は存続し、講談社の担当者は「一度ダウンサイジングして企画を練り直す」としているが、先行きは不透明だ。
部署はなくなったが、サイト自体は存続
モウラは2005年3月、前身のウェブマガジン「Web現代」をリニューアルする形でスタート。「Web現代」がニュース記事やグラビアといった男性誌的なコンテンツを中心にしていたのに対して、「モウラ」ではエンターテインメント系の記事を増やすなどしてコンセプトを大きく変更。ポータルサイトとしての性格を前面に出した。
05年には、同サイトに掲載された記事をもとにした書籍「生協の白石さん」が90万部以上のヒットを記録したが、有効なビジネスモデルは確立できなかった様子だ。ただし、サイト自体は存続するとのことで、モウラの編集長を務めていた服部徹さんは、
「6月1日付の機構改編で、『モウラ』の部署自体はなくなりましたが、サイト自体は存続します。コンテンツの編集作業は(書籍や雑誌の)各編集部に移管され、(ウェブサイトの)システムは、新設の『デジタルメディア推進部』が担当します」
といい、コンテンツは紙媒体の編集部が担当するという。服部さんは、今後のモウラについては、
「全社での共有資産にしたいと考えています。今後、全社的にモウラの使い方を告知することになります。コンテンツについては、一旦はダウンサイジングしますが、企画の見直しを進めます。モウラの今後は、各編集部の今後の頑張り次第です」
としている。
「雑誌の『休刊』と同じで、『復刊』は難しいのでは」
一方、「ウェブ現代」初代編集長の元木昌彦さんは、
「(収益モデルが確立できなかった)オーマイニュースと構造は同じ」
と話す。その上で、
「『Web現代』の時代は、グラビアなどの有料コンテンツで、『トントン』になりかかっていたのですが、『モウラ』という形で大きくコンセプトを変えてポータルサイト化したものの、その次の展開が中途半端だった。『生協の白石さん』などの書籍に関しては、うまくいったのですが…。現段階では、講談社のデジタル事業は頓挫してしまったのでは。雑誌の『休刊』と同じで、『復刊』は難しいのでは」
と、厳しい見通しを示している。
また、同サイトの企画に携わったことのある関係者は、別の見方で、
「元々、社内のメインストリームではない人が集められてスタートしたため、当初は『寄せ集め』的なコンテンツが多かった。ところが、『デジタルが重要』ということになって、紙媒体の人も集められてきた。その結果、紙媒体出身の人からからすれば、(デジタル出身の人に頼らずとも)『自分たちだけでコンテンツを作れる』という思いがあったのでは」
と話す。いわば、デジタル部門が「空中分解」したとの見方だ。
講談社をめぐっては、08年11月期決算で、76億円という過去最大の最終赤字を計上したばかり。紙媒体がジリ貧と言われる中、デジタル部門に活路を見いだしたいはずの同社だが、それも頓挫した形で、先行きはますます不透明になってきた。