セブン-イレブンの値引き制限問題で、本部とフランチャイズ加盟店との軋轢が浮き彫りになってきた。他店やスーパーなどとの競争が激化しており、本部の方針に反して値引きを続ける店が出てきているのだ。値引きが広まれば、コンビニらしさが失われるとの声はあるが…。
東日本のある加盟店「弁当を半額で販売」
セブン-イレブン各店でも競争は激しい(本文とは関係ありません)
「賞味期限が近くなった弁当は、半額で販売していますよ。総菜などほかのデイリー品も、全部値引きしています。うちの近くには、スーパーが2つもできて、競争が激しいんですよ。これで、商品を捨てない分、月に30万円ぐらいの利益になっていますね」
東日本にあるセブン-イレブンのフランチャイズ店店長は、あっけらかんとしてこう明かす。
セブン-イレブンでは、商品の推奨価格を決めているが、加盟店との契約で価格の最終決定権は店側にあるとされている。ところが、公取委の調査では、賞味期限前に値引きする「見切り販売」を同社本部が制限していると報じられている。もしこれが事実なら、店長は、本部の方針に反して見切り販売をしていることになる。
新聞各紙によると、公取委の調査は、優越的地位を乱用して見切り販売を不当に制限している独禁法違反の疑い。2008年10月に立ち入り検査し、09年2月になって報道で発覚。そして、5月28日には、公取委がセブン-イレブン・ジャパンに近く排除措置命令を出す方針を固めたと各紙が報じた。
公取委の動きについて、店長は、歓迎しながらも、「もっと早く着手してほしかった」と話す。
「『本部に逆らえない』と、追い詰められている店は多いんです。多額の借金を背負って自殺した店長も何人か聞いています。本部は『経営努力が足りない』と言いますが、必要以上の商品仕入れを強要されているんですよ」
24時間営業を維持できなくなる?
前出のフランチャイズ店では、賞味期限が深夜1時に設定される場合、前日午後8時に弁当を半額にするなどしている。セブン-イレブンでは、賞味期限の2時間前に売り場から撤去する契約だからだ。廃棄コストも店側負担になっている。
店長は、見切り販売のメリットについて、こう話す。
「長くやっている店は、廃棄の感覚が麻痺しています。しかし、値引き販売すれば、廃棄分4、50万円のコストが例えば10万円に抑えられます。これで廃棄物が激減するので、環境にもいいはずです」
新聞各紙によると、ほかにも見切り販売導入の店があり、廃棄が半分に減って利益が3割以上増えたケースもあった。競争が激しくなっているため、希望する加盟店も増えているという。
推奨価格制は、セブン-イレブン以外でも採用しているコンビニは多いとみられている。各紙によると、その言い分としては、値引きを許すと、新鮮な商品を売っているイメージが損なわれる、利益率が下がって24時間営業を維持できなくなる、などがあるようだ。
ネット上では、値引きを歓迎する声はあるが、コンビニのビジネスモデルが破たんするとの危惧も多い。セブン-イレブンでバイト経験があるという岡山市の男性は、ミクシィの日記で「コンビニの場合は24時間営業で日に3度ほど入荷があります。そうすると新品の商品と値引きの商品が同時に並ぶということになります。お金を持っている人でも多少の味さえ我慢すれば値引き価格で変えるのですから新品の商品を買う人は激減するでしょう」と指摘した。
同社の持ち株会社セブン&アイ・ホールディングスの広報センターでは、「現在、社内で調査中の案件ですので、コメントは控えさせていただきたいと思います」と話している。