モノ買わないのは成熟社会の証拠
「物欲消滅」は企業にとっては大きなショックだ。これは消費者がすでにあらゆるモノを手に入れていて、そもそも買いたいモノやサービスがないし、「安くても買わない」とも受け取れるからだ。
消費者は本当に「物欲」をなくしてしまったのか――。
楽天証券経済研究所の山崎元氏は、消費者がモノを買わなくなったのは「消費者の価値観が変わったから」と指摘する。
たとえば、いいクルマに乗るのがカッコイイとか、より豪華なモノを買って満足したいとか、消費者が思わなくなって、環境への意識であったり、社会貢献や文化面で他人よりも高い評価を得たい、という価値観が消費の尺度になってきた、と分析する。
その原因を、山崎氏は「所得が増えない不安もあるが、個人の意欲や目標がなかなか成就せず、精神的にも防衛本能が働いている。一種の自信喪失状態で、そのためにモノをはじめ、『欲しい』という気持ちが働かなくなってしまった」とみている。
「社会としては、まったく悲観するようなことはない。消費者がモノを買わなくなったのは、社会が成熟した証拠だ」