「新型インフルパーティー」なる行事の是非をめぐって、米国のネット上で意外な議論が繰り広げられている。「今のうちにわざと感染して、免疫を付けておくべき」というもので、医療関係のブログやフォーラムでも、賛否両論だ。だた、米衛生当局では、「大きな間違い」と、冷静な対応を呼びかけている。
「第1波のうちに免疫を作っておこう」という発想
「新型インフルパーティー」なる行事の是非について、2009年5月上旬からネット上で話題になっているようなのだ。
ニューヨーク・タイムズが2009年5月上旬に掲載した記事によると、インフルエンザの専門家が、女性誌の記者から「母親は、『水ぼうそうパーティー』みたいに、『新型インフルパーティー』を開くべきか」という質問を受けたのだという。
「水ぼうそうパーティー」とは、水ぼうそうの予防接種を受けさせたくない親が、水ぼうそうにかかった子どもの周りに、水ぼうそうに感染していない子どもたちを集める、というもの。わざと水ぼうそうに感染させ、子どもに強い免疫を付けさせることが目的で、米国ではしばしば行われているのだという。この「水ぼうそうパーティー」にちなんで、「『新型インフルパーティー』をやるべきか」という議論が起こっているようなのだ。
前出の専門家は、
「完全にばかげたこと。これを本当に試そうとする人がいるなんて信じられない。考え方は理解しますが、ウイルスが個々人の中で、どのように反応するかがよく分からないのが怖い」
と一蹴。それでも、ブログなどでは、1918年にスペインかぜが流行した時の様子を念頭に、「パーティー支持論」も展開されている。スペインかぜの場合は、春先の「第1波」での被害は、それほど大きくなかったものの、秋以降の「第2波」「第3波」で多くの死者を出している。つまり、「第1波のうちに免疫を作っておこう」という発想のようだ。
「リスクにさらすのは間違い」
また、世界保健機関(WHO)が、新型インフル対応のワクチンが開発されたとしても、年に10~20億人分しか生産できないという見通しを明らかにしたことも、この議論への支持が増す一因になっているようだ。
ただ、米保健当局は、きわめて否定的な見解だ。米疾病対策センター(CDC)のリチャード・ベッサー所長代行は、5月7日の会見で、「大きな間違い」とバッサリ。「リスクにさらすのは間違い」と訴えている。
「これ(新型インフル)は、新しい感染症で、日ごとに新たなことが明らかになっている。しかし、個々人が、この感染症によってどのような影響を受けるかについては、よく分かっていない。人々や子どもたちをリスクにさらすのは大きな間違いで、CDCとして、このようなやり方に従うのはお勧めしない」
なお、日本国内の状況については、 河村官房長官は5月25日の会見で、
「終息の方向に向かっているという感じを持っている」
と発言。秋以降の流行が、今後の焦点になりそうだ。