インターネットへの進出が目立っているNHKが、今度は巨大ネット掲示板「2ちゃんねる」など、インターネット上のコメント(書き込み)の分析・研究を進めている。番組が「どの時間に盛り上がっているのか」「どういった内容が話題になっているのか」を探り、番組制作に役立てる。
「2ちゃんねる」などの書き込み8000件で実験
こうした分析を可能にするのが、「情報還流システム」。NHK放送技術研究所が2009年5月24日まで開催していた「技研公開2009」の中で、研究段階の試みのひとつとして展示された。NHKが番組を放送し、視聴者がネット上にコメントを書き込む。そのコメントをNHKが解析し、解析結果を番組制作に役立てたり、さらにはその情報を基に感想を共有するコミュニティのような、視聴者参加型のサービスを形成したりするため開発されているシステムだ。
ネットには雑多なコメントがあふれている。それをどのように解析するのか。研究は、NHKの大河ドラマ「天地人」への「2ちゃんねる」を中心としたコメントデータ8000件を使用した。
まず、「何について」のコメントなのかを自動で分析する。例えば、「謙信もいよいよ出陣か」とあれば、「謙信」へのコメントと確定し、前後の「出陣キター」など、同じ要素が入ったコメントの主語も「謙信」と推定していく。同様に、番組の「字幕データ」とも照合する。「謙信」の「そこに義がないのなら」のセリフがあり、その前後の時間に「義がないときも戦したほうが良くね?」というコメントがあれば、「謙信」へのコメントと推定し、「義」「戦」と、同じ要素が入ったコメントの主語も「謙信」と推定していく。
ネットの反応は「雑音ばかりではない」
次に、抽出された番組内容へのコメントについて、「どのような反応」なのかを分析する。コメントの感情表現を「肯定」「悲嘆」「軽蔑」「驚愕」「否定」「突込」の6パターンに分類している。「ネット用語」や顔文字などの独特の表現についても、「キター」は「肯定」、「ガクガク」は「驚愕」、「○○かよww」は「突込」など、様々な表現を分類し、どのようなシーンでどんな反応があるのかを解析できるようにしている。
こうして解析したコメントを集計し、番組が「どの時間に盛り上がっているのか」「どういった内容がどのように話題になっているのか」を見えやすくし、番組制作に役立てる。将来的には視聴者への番組推薦サービスも検討しているという。
NHK放送技術研究所の広報担当者は、「2ちゃんねる」をはじめとするネットの反応を「雑音ばかりではないと思っている」と評価する。「研究自体はまだ始めて間もないものなので、今後も制作サイドの意見を反映させながら続けていく」とし、文章の解析手法や、どのサイトのコメントを解析すると効果的か、などについて研究を進めるという。
また、NHKは最近、一部の番組をネット配信する「NHKオンデマンド」(08年12月開始)、番組と連動した動画サイト「NHK特ダネ投稿DO画」(09年3月開設)や、大手動画サイト「ニコニコ動画」に「NHKちゃんねる」を開設(09年4月)するなど、ネットへの進出が目立っている。
「スリー・スクリーンズ」、つまりテレビ、ネット、携帯電話の「コンテンツを視聴する3つの画面」に対してサービスを展開していこうという方針が出ており、前出の担当者は、
「テレビ以外の様々なツールでNHKに触れることができるよう、研究やサービスを積極的に進めていきます」
と話している。