株主総会のピークを前に、上場企業の経営者は落ち着かない日々を過ごしている。というのも、個人投資家が役員報酬や退職慰労金の決定に監視の目を光らせているからだ。株価下落や無配など「損させられた」と感じている個人株主は少なくない。業績悪化にもかかわらず、経営者が高額な報酬をもらっているのではないか、と疑念の目でみているのだ。
44社の社長が月額50%以上を減額
東京証券取引所などに上場する企業のうち、2009年1~3月までに役員報酬の減額(減額幅の拡大を含む)を発表した企業は、判明しているだけで239社に上った(東京商工リサーチ調べ)。
JR西日本は09年4月から当面、山崎正夫社長と副社長2人が月額10%減額、11人の取締役は5%減額している。塗料の日本ペイントも4月から当面、酒井健二社長が月額40%減額するほか、役員が30~38%減額している。消費者金融大手のプロミスは09年5~10年6月まで、取締役・執行役員の報酬を月額10~20%減額するほか、09年6月23日に開く株主総会をもって役員退職慰労金を廃止するとともに、新たな役員報酬制度の検討を打ち出した。
また、オフィス用品のコクヨや消費者金融の武富士、自動車関連では東プレやフコク、ディーラーの東日カーライフグループ、カー用品のオートバックスセブンと、すでに減額に踏み切った上場企業は枚挙に暇がない。
こうした減額の理由が、業績の悪化にあることは言うまでもない。最近は業績連動型の役員報酬制度を導入している企業もあるので、制度に則って粛々と減額するケースもある。ただ、リーマンショック以降の世界不況は、経営者の予想を上回る勢いで拡大。あまりに急激な悪化で、経費削減に手をつけるしかなかった。東京商工リサーチは「(役員報酬の減額は)希望退職者の募集が増えてきたと同時に増えてきた」という。「派遣切り」が社会問題化したこともあって、リストラされた労働者らの目も意識したようだ。
減額幅も239社のうち、44社の社長が月額50%以上を減額した。
メールで「主張」する個人株主増える
役員報酬の減額幅を拡大する企業も少なくない中で、東証1部に上場する福井コンピュータは小林眞社長の年俸を、10%減額から3000万円の減額に拡大した。一部の主要株主から「赤字の主因となったメディカルフィットネス事業部門を主導した小林社長の経営責任が明確ではない」との指摘を受けたためだ。
これについて同社は、「個人株主からの問い合わせは常に受け付けているし、こちらからもきちんと返答しています。今回は株主の指摘に真摯に応えた結果です」と説明する。
個人株主からの問い合わせは、ふだんから増えている。背景はネットの普及だ。以前は電話での問い合わせが多かったが、最近はメールを利用する人が多い。メールであれば、場所・時間は問わない。福井コンピュータもホームページのIRコーナーに問い合わせ窓口を用意していて、「意見は匿名でも受け付けています。気持ちの深さはわかりにくいですが、言いたいことはしっかり主張してきます」と話す。
反対に、企業側にすれば株主の不満を事前に察知することができ、対応がとれることにもなる。