糖尿病への関心が高まるなか、大阪市では糖尿病の学会が開催中だ。その中のセミナーで、「これからの糖尿病治療を探る」というテーマで講演が行われ、会場いっぱいにつめかけた医療関係者が、今後の治療動向に熱心に耳を傾けた。
「この10年で米国では格段に治療法が進歩した」と語るエール大学のシルビオ・インズッチ氏
講演は、2009年5月23日、大阪市内のホテルで開かれている「第52会日本糖尿病学会年次学術集会」の中で行われたもので、関西電力病院の清野裕氏を座長に、エール大学のシルビオ・インズッチ氏と東京大学大学院の門脇孝氏が登場。最近の治療方法の動向について説明した。話題は、糖尿病の大部分を占めるとされ、過食や運動不足などの生活習慣によって発症する「2型」に集中した。
まず、インズッチ氏が、米国ではこの10年ほどで、治療法が格段に進歩したことを指摘。現段階では、「2型」については、11種類の治療法が存在するという。そのうちのひとつとして、「インクレチン」に着目した治療法に注目が集まっていることを紹介した。
インクレチンは腸管から分泌されるホルモンで、食後などに血糖値が上がると膵臓を刺激してインスリンの分泌を促す。このインクレチンの作用を高めるDPP-4阻害薬(シダグリプチンなど)は、従来の治療薬とは異なり、体重が増えることなく血糖値を下げることが可能になる。米国などですでに広く使用され、日本でも万有製薬など数社が承認申請中という。
「シダグリプチンはきわめて安全性の高い薬。将来的には、糖尿病の予防への応用も可能ではないかと思います」
と期待をこめて話した。
「出来るだけ早くから脂肪を減らす対策が必要だ」
一方、門脇氏は、糖尿病とメタボリックシンドロームとの関係を指摘。具体的には、皮下脂肪が付きにくい体質の人には内臓脂肪が付きやすく、本来ならば脂肪が付くべきではない肝臓などにも脂肪が付いてしまう。その結果、インスリンを分泌する膵β細胞の機能低下につながるとし、
「出来るだけ早くから脂肪を減らすための対策が必要だ」
と訴えた。
また、自身がリーダーを務める「糖尿病合併症予防のための戦略研究」(J-DOIT3)の状況についても紹介され、米国ですでに行われている大規模臨床実験よりも優れた結果が出ていることをアピールした。
学会は5月24日まで行われる。