民主党の鳩山代表が就任会見で、首相官邸入りすれば記者会見を誰にもオープンにすると「公約」したことが話題になっている。首相会見は、記者クラブが主催しており、それを無視することにもつながるからだ。そんなことが果たしてできるのか。
民主党「官邸主催など決まっていない」
上杉隆さんのコラム記事
新聞やテレビの記者に混じって、フリーのジャーナリストらの姿も混じる。民主党の鳩山由紀夫代表が2009年5月16日に行った就任会見。その中で、ジャーナリストの上杉隆さんが、政権を取った場合に、記者会見を同様にオープンにするのかを問いただした。
すると、鳩山代表は、次のような「公約」を明言した。
「私が政権を取って官邸に入った場合、上杉さんにもオープンでございますのでどうぞお入りをいただきたい」
官邸での首相会見は、記者クラブ主催のため、加盟社の記者以外は原則として入れない。現在は、上杉さんらも排除されている状態だ。しかし、鳩山代表は、それでも会見をオープンにしたいということだ。
民主党では、小沢一郎前代表が、3月24日の会見で上杉さんの質問にこの「公約」を初めて示している。上杉さんは、ダイヤモンド・オンラインの同26日付コラムで「日本の政治ジャーナリズムにとっては記念すべき日」と評価しており、鳩山代表からも言質を取ったわけだ。ちなみに、同党では、会見を2002年から民主党主催にして、フリーランスや海外メディアにもオープンにしている。
とはいえ、もし記者クラブの了解が取れなければ、その意向を無視してやらなければならない。とすると、官邸主催で会見をするということなのか。
これに対し、同党の報道担当は、こう言う。
「官邸主催にするかなど、具体的にどういった手続きで進めるかの議論には入っていません。会見では、何を質問されても構いませんが、不審者が入るのが一番怖いです。キャパシティの問題もあります。こうしたことは、新代表が総理になられたときに、考えることだと考えています」
記者クラブ側は、抵抗示す?
首相会見をオープンにしたときのセキュリティやキャパシティの問題について、ジャーナリストの上杉隆さんは、次のように指摘する。
「官邸主催でも、欧米では、それなりの人を許可してパスを出し、団体などが入らないようにしています。また、不審者については、厳しくボディチェックをしていますよ」
記者クラブが会見を主催するのは、権力側に都合よくならないためという根拠が挙げられる。これに対して、上杉さんはこう反論する。
「クラブが結束して何をしたのか、ただの一度も記憶がありません。政治家のスキャンダルも、雑誌メディアがスクープしたのを追いかけているだけでしょう。権力側にとって、クラブ以上に都合がいいことはありません。主催にこだわるなら、権力にルールを作られる前に、自らオープンにすればいいのです」
ところが、上杉さんによると、オープンどころではなく、記者クラブ側がそれに抵抗していると言うのだ。
「鳩山さんの就任会見では、テレビが生放送するというので、手を挙げてもなかなか当ててもらえませんでした。鳩山さんは、『上杉さんどうぞ』などと言ってくれましたが、記者が事前に事務局に頼んで私に当てるのを後にしてもらっていたようです」
実際、民主党ホームページから当時の動画を見ると、1時間の会見のうち37分過ぎごろに上杉さんが当てられている。質問に立った上杉さんは、なかなか質問できなかったことを「右手のいい運動になりました」と皮肉っていた。
民主党の報道担当は、こうした事実関係を全面否定しているが、上杉さんはこう言う。
「会見をいきなりオープンにすると反発があるので、最初は、記者クラブ主催と官邸主催を同時並行的にやっていくしかないでしょう。やるのは当たり前ですが、徐々に変えていくしかないと思っています」