りそなホールディングス(HD)が2009年3月期決算で最終黒字を確保し、公的資金の返済を残り約2兆円にまで減らした。世界的な金融危機の影響で、メガバンクが赤字決算を余儀なくされるなかでの大健闘だが、これは株式の「持ち合い」を減らしてきたからだ。保有している株式の時価が大きく値下がりした際に損失を計上する減損処理額がメガバンクよりケタひとつ少なくてすんだ。
株式持ち合い6年間で1兆円を圧縮
りそなHDの最終損益は、前期比59.1%減の1239億円の黒字。大幅な減益ではあるが、3メガバンクに住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスを加えた大手銀行6グループで初めて首位に立った。
黒字の要因を、りそなは「株式の持ち合い解消の成果」と話す。りそなは、2003年6月末に3兆円を超す公的資金を受け入れてから、融資や金融商品の販売などの本業を重視するとともに、リスク要因を徹底的に排除してきた。価格変動リスクの大きい保有株式、なかでも「持ち合い解消」を積極的に進め、この6年間で約1兆円を圧縮した。
持ち合い解消を進めたことで、09年3月期決算にりそなが計上した減損処理額は257億円にとどまった。一方、3メガバンクの減損処理額は、三菱UFJフィナンシャル・グループが5700億円、みずほフィナンシャルグループが5100億円、三井住友フィナンシャルグループが2200億円だった。
メガバンクも2000年代初めの株価低迷時には持ち合い解消に動いた。しかし、05年ごろに外資系ファンドによる敵対的買収が活発になると、企業側から持ち合い株式の要請があり、これに応じるかたちで復活していた。
要請に応じなかったりそなは、大手企業から取引を打ち切られたり、銀行内外から激しいバッシングを受けたりと、「(持ち合い解消には)かなりの痛みを伴った」という。その結果が損失を抑えることにつながった。
自己資本比率が、公的資金の返済でさらに低下?
もっとも、それだから万々歳というわけでもない。
りそなは資本注入時に3兆1280億円あった公的資金を、この3月末までに2兆852億円にまで減らした。しかし、完済まではなお時間を要する。
悩ましいのは自己資本比率だ。この3月期の減益要因の多くは不良債権費用が膨らんだことだ。不良債権処理を進めれば、自己資本を毀損しかねない。どの銀行も不良債権処理を進める一方で資本増強に動くなか、りそなの場合は不良債権処理で目減りする自己資本比率が、公的資金の返済でさらに低下する恐れが出てくるわけだ。
返済に充てる原資の問題もある。肝心の本業が、景気悪化で主力とする中小企業向け貸出が思うように伸ばせない。さらには、投資信託の販売手数料も株式市場が上向かないことには見込みが薄く、不動産関連手数料もマーケットしだいと厳しい。
09年3月期決算ではマイナス幅の縮小に効果的だった株式の持ち合い解消だが、株価が上昇基調に転じればプラスに働く。保有する株式が多いほど影響も大きいので、株価上昇時には「急浮上」できるが、りそなはその「武器」を持たない。
10年3月期の最終損益を、りそなは19%減1000億円と減益を予想している。