もやし人気が高まっている。値段が安いもやしはもともと不況に強い。今回もそうで、スーパーや発売元での売り上げは前年比2割増だ。これまでなかった、もやしを使ったレシピ本も登場し、「安くて、栄養素も豊富でヘルシー」などと優秀さを強調している。
なだらかな右肩上がりで売れるのは珍しい
キノコ・もやしの栽培と販売を手がける「雪国まいたけ」では、「雪国もやし」の2008年の売り上げが、前年比20%増だった。マーケティング部の担当者は2008年9月以来、なだらかな右肩上がりで伸びているという。もやしがこのような売れ方をするのは珍しい。ふつうは他の野菜の端境期(3月、5月、10月)に出荷が増え売れるのが通常で、例年とは違う売れ方には驚きを隠さない。担当者は、
「もやしはそれほど注目される食材ではなかったので、驚いています。これをきっかけに販促にも力を入れたい」
と意気込みを語る。
一方、スーパーのマルエツでもやはり、前年比2割増と好調だ。広報担当者は、「内食回帰と言われはじめた昨年秋頃から、自宅で料理する人が増えています。その際、もやしは野菜炒めやサラダにも使いやすいし、価格も手ごろだから買いやすいのでしょう」と分析する。
マルエツでは、250g入り39円で販売している。別の都内のスーパーでも、200g~250gを30~40円で販売していた。ときには目玉商品として、格安の10円で販売しているところもあった。
「家計を切り詰めたいときには助かる野菜」
そんな中、9万部も売れて話題になっているのが、もやしレシピ本『スゴイ!もやしレシピ―おなかスッキリ!家計も安心!』だ。2008年3月の発売。発売元の角川SSコミュニケーションズによると、この1年間コンスタントに売れ続け、異例のロングセラーとなっている。この本は、同社が隔週で発売している雑誌「レタスクラブ」のもやし特集をまとめたものだ。一口カツ、サラダ春巻き、ハンバーグなど、もやしを使ったレシピ72品が紹介されている。副菜になりがちなもやしだが、主菜としても取り上げられているのが特徴だ。
編集担当者の大矢麻利子さんは、「雑誌掲載時から、『もやし特集』は好評でした。読者からは、もやしの調理法がマンネリ化、レパートリーがなかったので、うれしい――こんな意見が寄せられています。もやしのレシピ集はほとんどなく、レパートリーには困っていたみたいです」と話す。
ちなみに、大矢さんによると、もやし特集は景気のいいときにはやらない企画だそうだ。アイデアをひねり出すためスーパーを回るが、もやしが売れているのは決まって不景気の時。「ふだんはあまり脚光をあびませんが、値段の浮き沈みが少ない分、家計を切り詰めたいときには助かる野菜。もやしは不況に強いと言えそうです」と分析する。
しかも最近では、もやしにはビタミンCや食物繊維が豊富で、アスパラギン酸という疲労回復に役立つ栄養素が含まれていることが知られてきた。野菜としてもかなり優秀なのだ。また、健康を気遣う人からもヘルシー食材として注目されている。安くて、栄養素も豊富でヘルシー――こうしたことから、もやし人気は高まっているようだ。大矢さんも、「このもやし人気、しばらく続きそうですよ」と話していた。