機能をインターネット関連に絞ってコストを下げた「ネットブック」と呼ばれる低価格ノートPCの売り上げが急激に伸びている。この低価格化の波はデスクトップ型にも押し寄せているようで、各社が5~6万円台のものを続々と発売している。「あまり支出はできないが、大きい画面を使いたい」という層に受けている様子で、発売元も手応えを感じている様子だ。「ネットトップ」とも呼ばれるこの「低価格デスクトップPC」、09年度は「飛躍の年」となるのか。
4万4900円で15..6型液晶モニターとDVDドライブ付き
ピーシーデポコーポレーションの「OZZIO(オッジオ) TRシリーズ」。売れ行きは堅調だという
この1年で、ネットブックの存在感が大きく増している。米調査会社のディスプレイサーチ(テキサス州)が5月13日に発表したところによると、09年の第1四半期(1~3月)に全世界で出荷された通常のノートPCの台数が前年同期比19.2%減の2440万台だったのに対し、低価格ノートPCの台数は同5.5倍の約590万台。ノートPC市場全体に占める低価格PCのシェアは、2.9%から19.5%に大きく伸びた。
市場を引っ張っているのは、エイサーやアスースといった台湾メーカーだが、東芝や富士通などの国内メーカーも参入、市場は混戦模様だ。
ここに来て、ノートPCにとどまらず、デスクトップPCについても、「低価格版」が続々と日本でも発売されているのだ。
例えば前出のアスース(台湾)は09年4月4日、画面に指を触れて操作できるタッチスクリーン式の「Eee Top」を発売した。画面は15.6型で、ネットブックの1.5倍程度の大きさだ。ワイヤレスキーボードもついて、希望小売価格は6万4800円だ。
PC専門店「PC DEPOT」で有名なピーシーデポコーポレーション(横浜市)も、09年3月に「OZZIO(オッジオ) TRシリーズ」を発売。最も安い4万4900円のモデルでも、15..6型の液晶モニターとDVDドライブがついている。ネットブックでは、DVDドライブは「外付け・別売り」なのが一般的だ。
同社のメディアマーケティング部では、
「予想通りの売れ行きで、『好調』と言えると思います。『PCに余りお金はかけられないが、大きい画面を使いたい』というニーズに応えることができたのが、主な要因だと思います」
と、手応えを感じている様子だ。
家では、スペックが高いものを望む人が多い?
ところが、国内の調査会社は、冷ややかな見方だ。MM総研(東京都港区)が09年5月13日に発表したところによると、08年度の国内の個人向けPCの出荷台数は、上半期が前年同期比15.6%増で、下半期が同11.2%増。景気後退の直撃を受けた法人市場とは対象的に、堅調な伸びを見せた。ところが、同社では、09年度の個人向けPC市場は「横ばい」、つまり「伸び率ゼロ」になると見ている。景気低迷で需要が冷え込む一方、ネットブックを初めとする低価格化で需要が促進され、「プラズマイナスゼロ」になるとの見立てだ。
同社では、ネットブックについても「09年度は微減または横ばい」と予測する一方、ネットトップについては、
「ネットブックほどのインパクトはないでしょう。ネットブックは『持ち歩き用のPCは、機能を削ってでも小さく・安くしたい』というニーズに応えられていました。ただ、デスクトップPCは、元々ノートPCに比べて割安ですし、自宅で使うものです。どちらかと家は、スペックが高いものを望む方が多いのではないでしょうか」
と、必ずしも競争力は強くないとの見方をしている。