1億円かけてフリーター 大学院生「今の半分で十分」 
(連載「大学崩壊」第8回/コンサルティング会社の橋本昌隆社長に聞く)

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文系の場合、就職できないのは自己責任

――就職できないのは、コミュニケーション能力がないなど、院修了者本人に問題があるのだ、とする「自己責任論」も耳にします。

橋本   まず理系の話をします。自己責任論は間違いです。この問題は明らかに、就職という出口のことをきちんと考えないまま、しかも学生たちには明るい希望があるかのように誘導した国策の誤りです。少子化が進む中、大学院生を増やすことで関連予算枠を守り、そして自分たちの影響力を維持しようという文部科学省の「裏ミッション」だったのではないか。私が仕事で接する企業や研究者、他省庁の人たちからそんな話を聞くこともあります。

――文系についてはどうですか。

橋本   文系のケースでは全く逆で、就職できないのは自己責任だと思っています。文系で修士・博士課程をとっても就職が厳しい状況は以前から分かっていたことで、それが好転する見込みがない事も明らかでした。学部を卒業する際に就職が厳しい時期だったため、経済情勢の好転を待って院へ進む、というパターンが結構あったと言われていますが、文系の場合はその議論は不毛です。その判断の結果責任は自分にあると言われても仕方ない気がします。法科大学院の定員は新しい問題ですが、こちらは早くも大幅削減の見通しが報道されています。

――大学院生数が多すぎることの弊害は、当人たちの就職問題以外にもありますか。

橋本   日本の研究のクオリティが低下していきます。低競争の中に身を置いていると、トップの層の堕落も始まります。研究費がトップ層に十分に回らない可能性も出てきます。最近接した理系の大学生からは「博士課程にいくと人生終わる」と、博士課程に進んだ先輩を見ての感想を聞かされました。こうした空気が広く蔓延するのは日本のためになりません。院生数の総枠削減と適正配置を真剣に検討すべきです。

橋本昌隆さん プロフィール
はしもと まさたか 1964年、京都生まれ。技術系人材派遣会社に10年勤めた後独立。2005年、コンサルティング会社「フューチャーラボラトリ」を設立、現在も社長を務める。産学連携の人材コンサルティングのほか、ベンチャー支援なども手がけている。

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