学校に理不尽とも言える要求を突きつけるモンスターペアレント。こうした「過激クレーム」に対応するには教師だけでは無理だ、として東京都教育委員会は専門家が中立的な立場でアドバイスをしたり、和解を進めたりする「サポートセンター」の運営を始めた。また、ネット上では対応策を紹介するサイトなども登場、モンスターペアレンツ対策が徐々に進みつつある。
仲裁や、和解をうながすことも
保護者による過激な物言いは続いている。
最近では、Q&Aサイト「ヤフー知恵袋」に2008年5月8日に寄せられた質問が話題となっている。記事の題名は「怒りが収まりません!!! 」。それによると、ゴールデンウィーク中に宿題をしてこなかったことに対して、子供が教師に怒られたというのだ。質問者の言い分は5月3日~6日、里帰りで九州へ行ったために祖母の世話などに忙しかった。そして、こう続けた。
「私は、家庭の事情を考慮せず勝手に宿題を出し、やってこない生徒(我が子)
を晒し者にした先生が許せません。
明日、校長先生にお話しにいこうと思います。
皆様、ひどいと思いますよね」
東京都教育委員会が2008年9月に発表した実態調査では、東京都の小中学校では約9%、高等学校では約15%が、保護者がらみの解決困難な問題が発生したという。
こうした状況を受けて、東京都教育委員会は2009年5月1日、学校だけで解決をはかれない問題を、専門家が中立的な立場でアドバイスを行う第三者機関「学校問題解決サポートセンター」の運営を開始した。
学校側(教員)はサポートセンターに対応の助言を求めることや、学校と保護者とのあいだでこじれた問題に対して、専門家と当事者が集まり、解決をはかる。専門家には弁護士、精神科医、臨床心理士、警察OBらが名を連ねる。
同センターは、「保護者とこじれて、学校だけでは対応が難しい場合があります。また、学校側への対応の不満から、トラブルが大きくなるケースも多い。これは教員が対応に慣れていないとことも一因です。センターでは、解決に向けた助言のほか、両者の仲裁や、和解をうながすこともやっていきます」と説明している。
「学校版クレーム対応ゲーム」で学ぶ
一方、保護者との間に起きたトラブルをシュミレーションし、対応策を紹介するサイトもある。編集プロダクションの「コンテクスト」が2009年3月10日に開設したサイト「Teachers Online-先生のミカタウェブ-」だ。教育誌の編集に携わってきた代表の佐藤明彦さんが、現場で働く若い教員のトラブル解決に役立つようにと立ち上げた。教師が学級通信に使えそうな著作権フリーの例文集が掲載されているほか、有料会員向けには、クレーム研究者として知られる大阪大学大学院の小野田正利教授の講演が閲覧できる。料金は月で525円。
中でもユニークなのは「学校版クレーム対応ゲーム」。現在公開されている【Case1】では、ケガをして帰ってきた子供を不信に思った保護者が来校し、責任を取ってほしいと訴えてきたという設定だ。
利用者はストーリーに従ってクリックするだけだが、途中、保護者への対応が三択で迫られる。ゲームを通じて、子どもとその親に対する正しい対応を学べるという仕組みだ。代表の佐藤さんは次のように話す。
「企業では初任者研修でクレーム対応を学ぶ機会がありますが、学校では保護者の対応を学ぶ機会は少ない。それを知る機会の一つとして企画しました」
また、学校側の事情が保護者に伝わらず、誤解や偏見となってしまうこともあると指摘する。
「たとえば、こんな話があります。研修が多く、学校を欠席。それを保護者の方が『あの先生はやる気がないのでは』――こう見てしまったそうです。実際は代わりの先生がフォローすることになっています。この場合、きちんと保護者に情報が伝わっていないことが問題だったのです」