980円のジーンズ、9800円の紳士用スーツ、380円Tシャツといった激安商品が続々と登場している。不況で消費が冷え込み、店はなんとかお客を呼び戻そうと必死なのだ。とりわけ百貨店まで「激安戦争」に参入してきたのが最近の特徴だ。
松屋銀座9800円スーツ、200着が即日完売
松坂屋銀座の「500円弁当」
百貨店、松屋銀座は紳士用の格安スーツを2009年5月13日から発売している。200着限定の「9800円スーツ」や、ウールシルク製のスーツは2着2万9800円、イタリア製ウールを使用したものは2着3万9800円で、紳士服チェーンさながらに安い。
同店によると、ヨーロッパで大量に生地を買い付けたこと、船便を利用して輸送コストを下げたことなどの理由で安くできた。
「初日の来客数は予想より多く、9800円スーツは限定200着が即日完売しました。前年同時期にもスーツのセールを行いましたが、さらにお買い得商品が揃っていますので、売上げは前年の上をいくのではないか」
と広報担当者は期待する。
購入時に1人1着限定1050円でスーツの下取りサービスもしている。5月25日まで開催する。
カジュアル衣料のユニクロは低価格業態の「g.u.(ジーユー)」で990円の格安ジーンズを3月から発売して、話題になっている。ユニクロのジーンズは2000円台後半から3000円台後半と他メーカーに比べて安いが、ジーユーはその半値以下だ。男性用は3型、女性用は9型あり、安いだけでなくデザインが豊富だと人気を集めている。
同社によると予想以上に売れているので、年間生産数を当初の2倍の100万本に増やした。
さらに10円安い、「980円ジーンズ」を5月13日から発売しているのは、セブン&アイ・ホールディングスが展開するスーパー、ザ・プライスだ。細身のスキニー、ブーツカット、ショートパンツ、くるぶし丈のクロップドの4型を揃えた。
中国の工場で生産し、店舗に直で入荷する仕組みで物流コストを見直したこと、股下の長さを72cmと76cmの2サイズ用意し、店での裾上げの手間を省いたことで価格を抑えた。年間5万本を販売する予定だ。
大手スーパーの西友は子供用T シャツを380 円で5 月1 日から販売している。
無地T シャツ(380 円)のほか、プリントT シャツ(680 円)、カジュアル半袖シャツとT シャツのセット(1480 円)がある。
1日平均300個売れる松坂屋銀座「500円弁当」
食品にも激安の波が広がっている。
西友は「298円弁当」を4月から販売。ハンバーグ弁当、サケ弁当など3種あり、具材を同一工場で作ることでコストを下げた。
大手百貨店、松坂屋銀座でもスーパー並に安い「500円弁当」が登場した。一口サイズの手鞠寿司が入った「たまて箱」、肉、魚、卵を使わず、大豆肉で作った酢豚をメインにすべて野菜でできた「まるごと野菜弁当」、豆腐専門店の「ハンバーグとお豆腐のまぜまぜ丼」など16種あり、銀座周辺で働く女性の声を反映して作られている。
「1日平均300個、多い日は400個近く売れます。平日は午後1時30分までに、ほぼ完売します」(広報担当者)
野村総合研究所、サービス事業コンサルティング部上席コンサルタントの日戸浩之さんは、激安ブームをこうみている。
「09年後半に景気が回復するという人もいますが、急激な『V字』回復とはいきませんし、(激安ブームは)まだ続くでしょう」
しかし、どんどん安くすれば小売りは自らの首を絞める、ということになりかねない。
「逆に言えば、低価格で利益が出る生産、販売体制ができている企業しか生き残れなくなっています」
と話している。