「2008年に世界を直撃した金融危機は自然が作ったハリケーンではない。人間が作ったハリケーンだ(It is not a natural hurricane but a man-mad one)」
カタールのシエイク・ハマド・ビン・カリファ・アルタニ首長は2009年5月3日、カタールのドーハで米欧アジアなど世界70ケ国から約200人の中東専門家などを招いて開いた国際会議ドーハフォーラムでこう強調した。アルタニ首長はさらに「危機の原因は、計画性のなさ、自信過剰、貪欲な金銭欲がもたらしたものだ」と指摘、「文化的、道徳的な危機は金融危機以上に邪悪だ」と主張した。
世界最大級の天然ガス輸出国であるカタールは、天然ガス輸出で外貨を稼いでいるが、経済収縮による価格の下落やドル価値の下落による収入減などの影響が出ており、資源国の首長として怒りが収まらない発言となった。来賓としてスピーチしたフランスのシラク元大統領も「民主主義は均衡の取れた社会なしには存在しない。グローバリゼーションは不平等をもたらした。苦しむのは貧乏人だけではない、従業員も苦しんでいる」と強調した。
GCCは世界第5位の経済ブロックになり得る
もっとも原油や天然ガスの市場価格が持ち直していることもあってか、参加した中東産油国の関係者は概して前向きな発言が多かった。カタールのハッサン・カマル経済金融大臣は「カタールも構成国となっているGCC(湾岸諸国会議)加盟6ケ国が結束し、持てるすべての資源を正しい計画に基いて活用すれば、2018年までにはGCCは世界第5位の経済ブロックになり得る」と指摘、「カタールとしては人材開発とイノベーションリーダーの育成に投資する。湾岸地域としては経済の安定成長とインフラストラクチャーに投資し、経済統合と統一通貨形成を進める」と強調した。
世界経済は景気底入れへの期待が高まる中で、ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油取引価格(WTI)は5月に入り6月物が一時1バーレル58・57ドルをつけるなど半年ぶりの高値を連日更新している。カタール首長の発言は手厳しいが、フォーラムの議論では全体にゆとりを取り戻しつつある表情が伺えた。