新型インフル用「ワクチン」 いざという時に足りなくなる?

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   新型インフルのワクチンが足りなくなったり、第2波に間に合わなかったりする懸念が出ている。製造ラインに限りがあり、製造そのものに時間がかかるからだ。どうすればいいのか。

ワクチン「2倍も3倍も増やすのは難しい」

「夏を越えて秋に第2波が来る」

   新型インフルエンザについて、河村建夫官房長官は、2009年5月11日の衆院予算委員会でこんな見通しを示した。かつてのスペイン風邪のように、第2波は多数の死者が出る可能性も指摘されている。

   舛添要一厚労相も、こうした事態に備え、季節性より新型のワクチンを優先したいとし、12日の閣議後会見で、その製造バランスについて6月初めをめどに決めることを明らかにした。ワクチンを作るための新型のウイルス株は、5月末にも感染国から入手できる見通しも示した。

   ところが、ワクチンの製造ラインには、限りがある。厚労省では、増産を検討しているが、新型ワクチンを一度に大量に作れるわけではない。また、同省によると、新型のワクチンを作れば、季節性のワクチンもある程度減らさなければならない。

   さらに、季節性のワクチン製造に少なくとも4、5か月かかり、新型については、ウイルスの増殖性によってそれ以上時間がかかる可能性もあるという。スペイン風邪第2波のピークが9、10、11月だったため、新型インフルでも、第2波に間に合わない恐れが出ているわけだ。

   ワクチン製造は、1994年に予防接種が義務から任意になり、需要の減少などから大手製薬会社が次々に撤退。現在は、民間企業や財団法人など4つしかない。唯一の民間企業となるデンカ生研では、政府から製造検討依頼を受けた新型のワクチンについて、「増産も視野に入れていますが、2倍も3倍も増やすのは難しいと思います」と明かす。製造にかかる時間は、ウイルス株を入手しないと分からないという。

「季節性のウイルスに新型のウイルスを足して作ればよい」

   新型インフルエンザのワクチン不足や製造の遅れには、どのように対処すればよいのか。

   北海道大学の喜田宏教授(微生物学)は、こう指摘する。

「季節性のウイルスに、新型のウイルスを足して混ぜる製造方法で、ワクチンを作ることができると考えています。日本は、ワクチンそのものが足りないことはありません。季節性インフルエンザでは、毎年何千人もが死んでいますので、そのワクチンを減らす理由はなく、足りなくならないようにすべきです」

   この製造方法だと、たとえ第2波に間に合わないとしても、季節性のワクチンを犠牲にせずにすむわけだ。

   一方、新型インフルに詳しい、けいゆう病院の菅谷憲夫小児科部長は、予防接種が任意になった直後に比べ、ワクチンの生産能力は上がっているとしたうえで、製造の遅れについては、次のように提言する。

「(高齢者など)ハイリスクと考えられる人に対し、第2波が来る前に、タミフルなどの予防投与をするのが現実的だと思います。ただ、第3波もあるかもしれませんので、新型のワクチン開発は必要です。そして、副作用には十分に気をつけながら、予防接種を進めていけばいいでしょう」

   厚労省の結核感染症課では、「季節性のウイルスに新型のウイルスを足して作るといいワクチンができない可能性がありますが、いろいろな選択肢について検討しています。新型ウイルスのリスクがどのくらいにもよりますが、季節性とのバランスを考えてワクチンを作る方向で考えています」と話している。

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