15兆円規模にものぼる補正予算の審議がヤマ場を迎えるなか、その内訳について、野党から批判の声があがっている。特に問題視されたのが、117億円の予算が付けられている「国立メディア芸術総合センター(仮称)」なる施設。お台場が有力な建設予定地とされているのだが、「アキバ文化」に詳しいジャーナリストからは、「秋葉原や『アニメのまち』杉並区などを無視する形のうえ、いきなり『ハコモノ』を作っても上手くいかないのでは」と、疑問の声があがっている。
1つの場所で、あらゆるメディアに触れられる施設?
「国立メディア芸術総合センター(仮称)」のイメージ図(文化庁報告書より)
鳩山氏は2009年4月28日の衆院本会議で代表質問に立ち、補正予算について
「官僚に頼り切りの麻生総理は、現在の予算に潜む税金の無駄遣いには手を付ける意志もありません。補正の規模は10兆円とうかがっていましたが、翌日には15兆」
などと「どんぶり勘定」ぶりを批判、その一例として、
「例えば、アニメの殿堂。総理のアニメ好きは存じておりますが、何故117億円も投じて『巨大国営マンガ喫茶』をつくり、独立行政法人を焼け太りさせる必要があるんでしょうか」
などと批判した。
鳩山氏がやり玉に挙げたのは、「メディア芸術総合センター(仮称)」と呼ばれる施設で、補正予算の中にも盛り込まれている。文科省関連で1兆3174億円あるうち、「文化芸術の振興-映画・アニメ等の『日本ブランド』の確立」という項目に315億円を計上。そのうち117億円が、今回の施設の建設に投じられるという。
文化庁の芸術文化課では、
「補正予算に含まれている『センター』の構想は、有識者による審議会『メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会』の報告書をベースにしたもの」
と説明。この「検討会」は、浜野保樹・東京大学大学院教授を筆頭に、「アニメ」「マンガ」「メディアアート」といった各分野から集められた11人で構成され、08年4月から6回にわたって会合が開かれた。その会議の成果として、09年4月28日に発表された報告書に、「センター」の概要が説明されていた。
まず、報告書では、
「我が国においては、メディア芸術作品について、分野横断的に常時展示している施設がないため、我が国の映画、マンガ、アニメ、ゲーム等のメディア芸術作品を、いつでも、かつ、一つの場所で鑑賞することはできない状況である」
と、現状の問題点を指摘。センターが目指すべき機能として、「メディア芸術作品の展示」「収集・保管」などを挙げている。さらに、
「映画、マンガ、アニメ、ゲーム等、メディアアート等をすべて一元的に取り扱うことが望ましい」
ともあり、「1つの場所で、あらゆるメディアに触れられる施設」のようなものを目指すようだ。さらに、「センター」の設置で、
「文化の振興に寄与するのみならず、観光の振興及び産業の振興にも寄与する」
とも力説している。