「ナイキ型」の景気回復か、それとも「L字型」なのか――。リーマン・ショック以降の景気悪化がやわらいで、「景気は底を打った」というエコノミストが現れるなか、その回復基調を表す曲線として使われている。かつての急激な「V字」回復ほどではないものの、「NIKE」のシンボルマークのような、緩やかに、徐々に加速していく景気回復を期待する気持ちがある。
在庫削減がGDPを押し上げる
徐々に加速する「ナイキ型」の景気回復に期待!
景気が回復基調にある証拠のひとつは、製造業の在庫削減が急速に進んでいること。経済産業省の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)によると、2009年3月の在庫指数は3.3%低下して100.1だった。電子部品やデバイス(いわゆる半導体関連など)を中心に、電気機器などで在庫の過剰感が薄らぎつつあると報告された。
日本銀行の白川方明総裁も4月30日の記者会見で、「景気面では、2009年前半は内外の在庫調整の進捗を背景に、景気悪化テンポが徐々にやわらいで、しだいに下げ止まりに向かうとみられる」と発言。日銀は国内の在庫水準について、08年10-12月期に上昇したが、09年1-3月期には上昇に歯止めがかかるか、減少に転じているとみており、「生産調整が一巡すれば、実質成長率を押し上げる」と指摘した。
実際に企業の在庫状況は急転している。電機大手の東芝は、半導体事業において09年6月も5~10日間の一時帰休を行うが、2~3月に比べて期間を短縮した。あらゆる製造業の「要」ともいえる素材産業、なかでも半導体市況は過剰在庫の解消と中国などの新興国での需要で、「底打ちが見られる」(第一生命経済研究所・主席エコノミスト嶌峰義清氏)ところにまで回復してきた。
半導体は中国で、携帯電話の端末需要としても伸びているという。
人員削減など、多くの「血」を流しての大幅な減産を進めた自動車メーカーも、トヨタ自動車をはじめ増産体制にシフトする。トヨタのお膝元、日銀名古屋支店の前田純一支店長は「自動車産業の在庫整理はおおむね終局を迎えつつある」との見方を示している。
自動車産業は部品や素材メーカーなどの周辺産業への影響が大きいので、増産への期待は高まるばかり。また、化学工業や電気機器、情報通信機器などでも過剰在庫が急速に解消。鉄鋼業も在庫整理が一巡し、実需に見合った生産レベルに回復するとの見方が広がっている。
日銀の見立てどおり、在庫削減がいまの景気の回復基調に大きく寄与していることは確かなようだ。