地味、影が薄い、どこにあるか分からない――そんな認知度の低い山陰地方の2県、島根県と鳥取県が、あの手この手を使って、知名度アップに取り組んでいる。
「そもそも場所はどこにある?」という切り口
「左右」、分かりますか?
「鳥取は島根の右側です!」。そんなキャッチコピーが入った黒いTシャツが2009年4月20日から売り出されている。これは07年に制作され話題になった島根県のTシャツ「島根は鳥取の左側です!」の相乗効果を狙い、鳥取県が発売したもの。表には鳥取県の形と同県出身の漫画家、水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」があしらわれている。
「右も左も分からないという声も。『え?石川のあたりでしたっけ』と言われたこともある」と悲しそうなのは鳥取県・観光政策課の担当者。今回の企画は、島根県のTシャツをたまたま目にした鳥取県知事が、双方でPRできれば、ということで実現したのだという。
「知名度アップのために地道な取り組みを続けてきましたが、発想を変えてまずは『そもそも場所はどこにある?』という切り口で、まずは位置を知ってもらう。そこから興味を持ってもらえればと思っています」
鳥取県は漫画にゆかりが深い。前出の水木しげるさんや「名探偵コナン」の青山剛昌さんなどの出身地で、人気漫画「タッチ」や「ハチミツとクローバー」の舞台でもある。同課によると台湾、韓国などアジア各国での「まんが博」に出展、09年6月に韓国、ロシアと鳥取・境港を結ぶフェリーが就航することもあり、「海外からの観光客も見込めれば」と意気込んでいるそうだ。
「水木しげるロード」がある境港市観光協会でも、トランペッター・日野皓正さんを迎えた「妖怪ジャズフェスティバル」や「妖怪そっくりコンテスト」など、妖怪に絡めたユニークな企画が功を奏し、60万人前後だった観光客を07年には148万人、08年には172万人に増やすことに成功。09年5月7日には、大型連休中(4月25日~5月6日)の入り込み客数が過去最高の24万5003人(08年比5.1%増)だったと発表している。
「もう、どこにあるの?と言わせたくない」
一方、元祖「島根は鳥取の左側です!」Tシャツの島根県も負けてはいない。NHK番組「都道府県ワースト脱出大作戦」(2007年)で「認知度ワースト1」という不名誉な称号をもらってしまった島根県。公認の応援サイト「リメンバーしまね」で、自虐的にこうつづっている。
「日本で最も認知度が低いことで、日本一有名な島根県の応援サイトです」
「もう、どこにあるの?と言わせたくない」
このサイトについて島根県広報広聴課は、
「認知度ワースト1の島根県、ってどんなところ?と逆に、面白そうだと思ってみてもらえれば」
と話す。現在4000人の「応援団員」が登録、そのうちの約7割が県外からの団員。県内外からさまざまな島根県ネタを投稿しながら、島根を「リメンバー」することが目的だ。
このサイトには「島根は鳥取の左側です!」Tシャツに描かれているキャラクター「吉田君」も「初代応援団長」として登場する。この「吉田君」、07年、08年と2度にわたって映画化されたアニメ「秘密結社 鷹の爪」のキャラクターで、島根県の出身という設定。島根県のアピールに一役買ってくれたことで08年5月、「しまねSuper大使」に任命され、現在は「吉田君」をつけた特産品を発売する企画も進行中だという。「東国原知事のようになってもらえたらいいですね」と担当者は語っている。