自分の体を悪くしてしまう看護師も多い
日本看護協会の小川忍理事は、こうした看護師の現状について、「夜勤があって、休みも取れない。人がいないので残業せざるを得ない悪循環。看護師の労働問題を改善する必要がある」と指摘する。離職の原因ははっきりしている、という。
「それは結婚、妊娠、出産、育児、親の介護です。そして、夜勤の負担とその責任が重すぎるという複合的な要因があります。また、看護師がボランティア精神を重んじ、患者の安全・健康を願う考え方が強すぎるために、自分の体を悪くしてしまう人も多く、離職につながってしまうのです」
小川理事によると、昔は助からなかった命が今は助かっている現実があり、そのための負担も大きいそうだ。いずれにしろ、20代の看護師に対して、働き続けられる仕組みが必要だという。
「給料も少なく、休みが取れない――こうした状況を改善する必要があります。夜勤が続けられずにやめた人は非常に多い。夜勤免除の仕組みについて整備し、意識を変える必要もありそうです。看護師が復帰しやすい制度も必要でしょう」
小川理事は、資格をもちながら働いていない看護師推定65万人に対して、再就職してもらえれば、とも考えている。その際、昼間だけ働き、新人の基礎教育、育成を担って欲しいと期待を寄せている。
一方、看護師が不足している地方で、対応策を打ちだしているところがある。北海道では、都市部の大規模病院から地方部へと看護師や助産師を派遣する制度を考案、検討しはじめている。北海道看護対策グループは「詳細は検討段階」としているものの、北海道では都市部では人口10万人に対して看護師1000人を超える一方、地方部では700人台と少ない。看護師不足のために病床を減らした病院もあり、対応が迫られている。
また、看護師不足にあえぐ島根県では、岡山県や広島県などの近隣の都市で就職ガイダンスを実施し、Uターン就職を呼びかけるなど手を打ちはじめた。島根県医療対策課によると、看護師不足から公立病院の一部病棟を閉鎖したこともあり、人材確保は急務。「県内の養成所を待っていては足りない状況。近隣の広島や岡山をターゲットにしている」と話している。