インターネット通販大手の楽天・三木谷浩史社長が2009年5月3日、テレビ朝日系の報道番組「サンデープロジェクト」に出演し、日本薬剤師連盟から政界に巨額の献金があったと暴露した。テーマは09年6月より施行される「医薬品のネット販売規制」で、三木谷社長はこの規制に強く反対したが、その背後に金の動きがあると言いたかったようだ。
三木谷社長「不自然だと考えざるをえない」
楽天「医薬品通販継続活動チーム」のブログ
三木谷社長は金額などをボードで説明したが、政治家の個人名は出さなかった。「中には(05年から07年の)3年間で3億円以上もらっている人もいる」と言及はしたが、大口の献金を受け取った政治家の名前も出さずじまい。
06年6月に成立した改正薬事法では、医師の処方せんなく購入できる一般用医薬品がリスクに応じて第1類医薬品から第3類医薬品まで分類されている。今回のネット販売規制は、この改正薬事法に伴い09年2月に公布された省令改正で、リスクの低いビタミン剤など「第3類医薬品」を除いた一般用医薬品の、ネットや電話などの通信販売を規制するというもの。09年6月から施行される。安全性の確保が目的とされるが、通販大手のヤフーや楽天などが反対の署名活動を行うなど反発していた。
三木谷社長は、ネットでの医薬品販売では事故が1件も起きていないことに触れ、「(規制は)不自然だと考えざるをえない」と主張。また、「利益のためでは?」という司会の田原総一朗氏の質問に対しては、医薬品販売に係る利益は全体の約0.5%ほどだとし「本当に困る人がいる」ために活動していると話した。
三木谷社長が示した政治献金は、05年から07年にかけての日本薬剤師連盟関連のもので合計が14.3億円。「なぜ1業界団体がここまで献金して、こういう仕組みをキープしなければならないのか、私には分からない」「利権の構造のように感じている」と話した。
ところで、放送翌日の09年5月4日、同社の「医薬品通販継続活動チーム」が運営するブログで、番組内で言及された「14.3億円が永田町の誰に渡っているのか?」として、その内訳が公表された。自民党議員の上位には藤井基之前参院議員(3億2490万円)、常田たかよし前参院議員(8600万円)、松本純衆院議員(5650万円)、民主党議員の上位にも三井わきお衆院議員(441万円)など、薬剤師出身者が並んでいる。中にはネット販売を「第3類医薬品だけに」と主張している「医薬品のネット販売に関する議員連盟」の会長・尾辻秀久参院議員(500万円)や事務局長・渡嘉敷奈緒美衆院議員(2890万円)の名前もある。
「ネット販売規制に関連して利権構造であるとの認識はない」
この内訳を公表した理由について楽天広報は、「番組内で弊社社長が言及した献金についての『補足情報』である」とだけコメントする。総務省などで公表されている政治資金収支の報告書を資金管理団体、政治団体と関連して独自に調べたもので、「全てが網羅されているものではない」と言う。この取材を申し込んだ7日には、ブログに「献金等の状況」として、献金の日付と提供先の団体、関係議員のついてのリストが追加された。
J-CASTニュースが日本薬剤師連盟に番組への反論を求めると、
「本連盟が政治資金規正法にのっとり、国会議員の政治活動を支援している目的は、わが国の医療制度、医療保険制度、薬事制度等において、国民の視点に立って、医薬品等が安全かつ適正に使用されることが確保されるようにするためであり、今回のネット販売規制に関連して利権構造であるとの認識はない」
とコメントする。
また、3億2490万円の献金を受けているとされた藤井基之前参院議員の事務所は、「当事務所は、政治資金規正法にのっとって処理しております。『薬害の根絶』という藤井の政策に賛同いただいております」と回答してきた。
政治資金問題に詳しい、郷原信郎・名城大学教授は、日本薬剤師連盟も医師会、歯科医師会も同じ。政策によってダイレクトに「儲け」が違ってくる団体で、ロビイングのような形で政策実現のために支援しているのだろうと話す。
「どこからどれだけの献金をもらって、どのような政策を実現しようとしているのか。これを透明化するのが政治資金規正法の役割。こういった情報を知って最終的に国民が、良いのか、おかしくないか、といった政治的議論をしていかなければならない」
と話している。