「昔ながらの味」が今風にリニューアルされている。日清の「チキンラーメン」は若年層に向けた大盛カップ麺を発売。大塚食品の「ボンカレー」はお母さんの手作りの味にこだわって新登場。なつかしの味、お袋の味を再現していることが人気の秘密だ。
お母さんの味、なつかしい味として親しまれている
ボンカレーネオ(左)、沖縄限定ボンカレー
1958年に世界初のインスタントラーメンとして誕生した日清食品の「チキンラーメン」シリーズ。その中でも人気の「チキンラーメンどんぶり」の1.5倍にあたる120gの麺が入った「日清でかっ!チキンラーメンカップ」が2009年4月29日に発売された。大盛タイプが登場し、これまでの量では物足りなかった若年層も取り込む狙いがある。従来サイズは麺80gで170円なのに対し、大盛タイプは190円とお得感も出した。
創業者の安藤百福氏が、簡単に調理できることなどの点にこだわって発案、50年間のシリーズ累計販売数は53億食(袋麺)に達した。
広報担当者は、
「『また食べたくなる味』を目指して作っています。チキンスープと醤油で味付けした麺を油で揚げることでこうばしくし、日本人になじみのある味になっています。小さい頃に食べたという人も多く、お母さんの味、なつかしい味として半世紀に渡り親しまれています」
と新商品の売れ行きを期待する。
女優・松山容子さんのパッケージでも知られている大塚食品のレトルト食品で人気の「ボンカレー」は、09年で発売41年目を迎えた。
09年2月に国産のじゃがいもとにんじんを使い、カレーソースにバターを加えた新商品「ボンカレーネオ」を発売したところ、「好調だ」(同社)。シリーズ全体で25億食超が売れている。
「誰もが簡単に『お母さんの手作りの味』を再現できるというのが、ボンカレーの売りです。リニューアルして具材やソースの味は微妙に変えているが、原点は変わっていません」(広報担当者)
沖縄では、松山さんのパッケージものが今も売られている。
飲料にも高い人気を誇っている商品がある。90年間、同じ乳酸菌から作り続けている「カルピス」。通常のカルピスよりも生乳を多く加え、デザート感覚で飲める飲料「ロイヤルミルクカルピス」を09年5月25日から関東エリアのコンビニエンスストアを皮切りに、全国で順次発売する。
濃縮タイプがポピュラーだが、最近はペットボトルタイプが売れている。水に薄める必要はなく、そのままで飲める。カルピスシリーズの08年出荷量は前年比2割増だった。
「生乳生まれで安心、健康というイメージや、子供の頃に家族で飲んだという幸福な記憶もあり、親しまれています」(広報担当者)
懐かしの味、記憶との密接な関係
ロングセラー食品の人気の理由は何なのか。何度食べてもおいしいと感じる「お袋の味」と似ている。
「子供の頃から食べている味は、記憶と密接に関係しています」
というのは、「うまみ」について研究している京都大学農学研究科伏木亨教授。
カルピスが発売された当時、今のように甘い食べ物はほとんどなかった。それだけに洗練された甘みのあるカルピスは、子どもたちの記憶に強く残ることになる。大人になって飲んだ時に記憶が蘇り、一層おいしいと感じるようだ。「幸福な記憶」が代々受け継がれ、飲料が豊富にある今でも子どもにカルピスを飲ませる親は多い。
インスタントで手軽に作れるボンカレーは、子どもの頃や学生時代に家でよく食べられている。大人になって食べた時、なんとなく「ほっとする」のは、「お袋の味」として記憶に残っているからだという。
伏木教授は、
「カレーには『脂っこさ』『強いうまみ』『野菜の甘み』といった誰もが好きになる要素が入っている。レトルトシチューではここまでのベストセラーにはならなかったでしょう」
と話している。