朝のTBS系ワイドショー。2009年5月7日の新聞紙面紹介コーナーで、司会のみのもんたさんが驚いた。「あれ? まったく同じだな。どっちかが撮って融通したのかな」。この日の、サンスポと日刊スポーツの1面を見比べている。前夜の巨人・横浜戦で巨人・坂本選手がサヨナラ本塁打を放ったときの写真がそっくりだったのだ。
日刊のすぐ近くでサンスポも撮影
5月7日付けのサンスポ(左)と日刊スポーツ(右)
両紙の1面トップ記事。どちらも本塁打直後の、ボールを目で追う坂本選手の写真を大きく使用している。アングルとタイミングが同じに見える。「サヨナラ弾 坂本」という主見出しも同じ。文字色とレイアウトも似ている。みのさんならずとも、「まったく同じ」と思ってしまう。
まず、日刊スポーツの写真部に聞いてみた。
「カメラマンがいくつか送ってきた写真の中から、デスクが1番いいと思ったものを使っています。目を見開いて口を開けている表情がいいと判断されたのでしょう。サンスポの写真ですか。このシーンが欲しいと思ったときに、近い位置から同じようなタイミングで撮影された写真ですから、似てしまうのは仕方ない。珍しいことではありません」
この日、試合前の撮影席を決める抽選で、日刊スポーツの鹿野芳博カメラマンは、観客席の下にある3塁側カメラ席、ベンチに近い方から2番目の席を引いた。その2つ隣の席にサンスポの大橋純人カメラマンがいた。
鹿野カメラマンは坂本選手の本塁打の場面を、400mm望遠レンズでシャッタースピード500分の1、1秒間に7~8コマの連続シャッターで撮影した。片や、サンスポの大橋カメラマン。同じく400mm望遠レンズを使用し、1秒間に8コマ前後の連続シャッターを切った。シャッタースピードも「500分の1くらいだったのではないか」という。その結果、ほとんど同じ瞬間の写真が両紙を飾ることになった。
似てしまったのは「悔しいですね」
「サヨナラ弾 坂本」という見出しを付けた日刊スポーツの整理部は、
「捻らないでオーソドックスに考えると、今日の見出しはこれしかなかったですね」
と話す。
「似てしまったというのは、やはり悔しいですね。今日のサンスポの1面を見たときに『なんだ同じかぁ』と思いましたよ。サンスポさんも同じ気持ちではないでしょうか。ただ、写真を大きくしたという点ではうちのほうが優れています。字数を調整しつつ大胆に写真を使うというのは、パズルみたいなものでテクニックが必要ですから」(日刊スポーツ整理部)
一方のサンスポはどう思っているのか。サンスポ編集整理部は、
「よく見てください。違いますよ。坂本選手の写真も、うちの方が明るくて動きがある絵になっています。また、バットまで写すことによって、今季からグリップ部分にテープを巻くことになった坂本選手の裏話を紹介しました。よく読み込むと、これはうちの勝ちですね」
と負けていない。一見似ているようでも、作っている方にとっては全然違うということなのだ。
ちなみに日刊スポーツによれば、カメラ席で2紙の間に挟まれていたのが読売新聞のカメラマン。7日は休刊日だったので、同日付けの読売新聞夕刊を見てみると、ヘルメット片手にグラウンドを走る、全く別の坂本選手の写真が使われていた。