これまで「.jp」や「.com」などに限られていたインターネットのトップレベルドメイン(TLD)に、漢字表記の「.日本」が登場することになった。総務省の情報通信審議会インターネット基盤委員会が2009年4月、国名や地名をTLDに使用する場合のルールなどを定めた報告書案をまとめた。7月に正式決定するが、新たなTLDはドメインビジネスに活況をもたらすだろうか。
「くいだおれ.osaka」が出現?
ドメインはインターネット上の住所にあたる。住所である以上、重複は許されない。そのため非営利団体ICANN(米カリフォルニア州)がドメイン名を管理している。
J-CASTニュースのアドレスでいえば「https://www.j-cast.com」のうち、末尾の「.com」がTLD。欧米の住所の表記方法は日本とは順序が逆で末尾が国名。つまりTLDは国名にあたり、ICANNは使えるTLDを国別と約20種の分野別に絞って管理してきた。たとえば「.jp」は日本を意味する国別で、商業組織用の「.com」、非営利組織用の「.org」などが分野別だ。
しかし、多様化を求める声が世界的に多く、08年6月、TLDの原則自由化が採択された。
この規制緩和を受け、委員会ではTLD管理のルールが審議された。
テーマの一つが日本語の国名TLDの選択だった。国名についてはICANNが相変わらず「1公用語あたり1文字列」と制限している。「日本」であれば「にっぽん」か「にほん」か、という読み方のぶれに影響されないため「.日本」が選ばれた。
また、自治体が了承すれば「.東京」「.osaka」など地名使用を認めるルールもできた。つまり「太郎.東京」「くいだおれ.osaka」といったアドレスが可能になる。
新たなアドレスは、ICANNに申請して新たなTLDを取得した管理運営事業者が、国内の登録事業者を通じて利用者に販売する。
取得者が増えてドメインビジネスが拡大する
TLDの多様化への期待は大きい。
日本の法人、個人が取得しているドメイン数は推計で200万~300万件で、インターネットの普及率の割にはドメイン数が少ないとされている。「.jp」の管理事業者から、登録事業者への卸値は米国の4倍、韓国の2倍高く、取得額の高さが障壁になっているという指摘もある。
そのため、ある業界関係者は「TLDの多様化で価格競争が進めば、取得者が増えてドメインビジネスが拡大する」と期待を寄せる。
また、日本語ドメインが増えれば、ウェブブラウザのアドレス欄に日本語入力することで、直感的に希望のページに飛べるようにもなる。中でもアルファベット入力が苦手な人には朗報だ。検索サイトでの順位を上げるために多額の費用を投じてきた企業や団体も、商品やサービスごとにアドレスを取得し、客をサイトに誘導しやすくなる。
しかし課題はTLDの取得費用だ。管理事業者がICANNに支払う申請料は約1800万円。維持費年約250万円で、ほかに設備投資も必要だ。しかも、日本語混じりのアドレスの場合、メールアドレスに使用できず、利用者がどこまで増えるかは未知数といった事情もある。