コーヒーチェーン「スターバックス」が不況のあおりを受けて苦戦ぎみだ。既存店の売上高をみると、2009年3月は対前年同月比2.2%減、2月2.3%減、1月6.9%減、08年12月5.0%減とマイナス続き。「少々高くても行く価値がある」というお客に支えられて最近まで成長を続けてきたが、ここにきて「スタバ」神話に陰りが出てきた。
ひと頃はスタバに行くのがちょっとした「ステイタス」だった
米国では本家「スターバックス」が苦境にあえぎ、次々と閉店に追い込まれている。
08年10-12月期決算の純利益は6430万ドルで、前年同期の2億810万ドルに比べて大幅に減少した。09年4月29日発表の09年1-3月期決算によると、純利益はさらに減って、2500万ドル(前年同期1億870万ドル)だった。08年は600店を閉鎖するとしていたが、09年1月に300店の追加閉鎖と従業員の6700人削減を発表している。
スターバックスは1971年にシアトルで開業し、米国内で1万2000店舗にまで拡大した。日本にも96年に進出し、2009年3月末現在で840店舗を展開している。
日替わりの「ドリップコーヒー」は1杯290円から、エスプレッソにミルクを入れた「スターバックスラテ」は320円から、甘い風味が人気の「キャラメルマキアート」は370円から。
人気の秘密はコーヒーのおいしさだけではない。ゆったりとしたソファでくつろいで飲めること、「バリスタ」と呼ばれるスタッフの丁寧な接客を受けられること、といった「いやしの空間」も売りだ。普通のコーヒーチェーンに比べて高めの価格設定だが、ランチ代を節約しても行くという女性もいたほどで、ひと頃はスタバに行くのがちょっとした「ステイタス」だった。
今も「スタバ派」は健在だが、ネット上の書き込みを見ると、「スタバは高いし、食べ物にろくなのがない」「値段が高い」という批判も目立つ。1杯200円でブレンドコーヒーを提供するドトールコーヒーや、日本マクドナルドの120円コーヒーを推す声もある。
高級路線のコンセプトがブレてきた
既存店売上高は09年3月が対前年同月比2.2%減、2月は2.3%減、1月は6.9%減、08年12月5.0%減とマイナス続きだ。08年4月から09年3月までの12か月間で、プラスだったのは08年7月と11月のみ。09年3月期第3四半期(08年4月1日~12月31日)の純利益は23億700万円で、前年同期に比べて6億5300万円減った。
日本ブランド戦略研究所(東京都港区)の榛沢(はるさわ)明浩代表は、「ブランド力」が衰えてきていると指摘する。
「一般的に、店舗が増えるとその分、広告効果が出ますが、過剰露出すると『どうしても欲しい』という飢餓感が薄れてしまいます。チェーン店は体力がある限り、どんどん出店するというのが鉄則ですが、スタバの場合、出店場所にも問題があったようです。当初はどちらかというと高級感のある場所に出店していましたが、そのうちスーパーマーケットや駅なかにも広がり、普通のコーヒーチェーンとは一線を画した高級路線のコンセプトがブレてきたようです」
これに対し、スターバックスコーヒージャパン広報担当者は、既存店の売り上げの落ち込みについて、景気減速の影響を理由に上げる一方で、
「世界規模で経済が落ち込んでいるが、それに比べたら(このマイナス幅は)いい方だと思います」
としている。
ドトールコーヒーの場合は、ドトール単体の既存店売上高は08年9月1.3%増、10月は1.8%増と健闘していたが、08年11月(1.0%減)からマイナスに転じ、09年3月は5.1%減だった。
同社広報担当者は、
「こういうご時世ですから、値頃感のある方をお客さまは求めているのでは。安いだけでなく、クオリティにも自信があります」
と話している。
既存店売上高が08年5月から09年3月まで11か月連続して前年を超えている日本マクドナルド。08年11月14.4%増、12月2.0%増、09年1月3.4%増、2月1.3%増、3月6.8%増と絶好調だ。
08年2月にリニューアルした「プレミアムローストコーヒー」は、1杯120円と安くておいしいと好評で、08年までに1億6000万杯を販売した(アイスコーヒーを除く)。
マックの快進撃に比べると、スタバは07年4月~08年1月は既存店売上高が前年比0.3~4.6%増と10か月間連続でプラスだったのが、08年2月以降は一転してマイナスの連続。神話に陰りが出てきているように見える。