経費30%カットに猛反発、結局「前年比5%削減を毎年続ける」
当初は経費30%カットを目指したのですが、猛反発があって「10%でいこう」としたんです。それでも「現場がついていけない」ということになって、結局は「前年比5%削減を毎年続ける」になりました。そうして削減した経費を、教育・研究のために投入しました。また、4半期報告を徹底して行うかたちで、情報公開を進めるようにしました。
ただ、これで節約した資金は、内部留保に回すのではなく、教育・研究費として再投資することにしました。私の在任中も教育研究関係の予算は、ゆるやかではありますが、上昇を続けていました。その他の経費については、ひたすら押さえ、活性化をしました。12年間、毎日、逆風の連続でした。心ある学部長からは応援する声もありましたが…。
――大学の現状についてどう感じていますか。
關: 18才人口の減少は大学をどう変えるのか、学校産業界は答えを出していない。大学経営は新次元に入ったのです。入学定員に満たない大学が42%超。これが現状です。受験者が減少していくと、学校経営が難しくなるのは当たり前。同時に、社会も衰退していきます。大学も同時につぶれていくような社会環境におかれていることを理解する必要があります。問題なのは、マネジメントの考え方が欠落していること。2つめは、「護送船団方式」と既得権益の上にあぐらをかいていること。その結果守られたのは、教職員のポストと給料です。で、金属疲労とでもいうべき事態が起きてしまっているんです。
1. 40%は文科省の責任。大学全体の見取り図を描いていないからです。
2. 45%は、学校法人の責任です。経営感覚がない人が、責任逃れ体制のまま、経営にあたっている点。
3. 15%は、見て見ぬふりをしている利害関係者、ステークホルダーです。
――今後これらの大学は、どのようになってしまうのでしょう。
關: 全国には大学が約760校ありますが、「大学は永遠」ということは、決してありません。淘汰の時代の始まりです。そういう意味で、グローバル化の競争が、すでに始まりました。そんな時代に、作らなくても良い大学が作られています。文部科学省は、認可申請を出されて、ある程度の財政の見通しが示されれば、申請をOKせざるを得ないんです。ですが、例えば開校3年後の状況をチェックしているかと言えば、そうではない。いざ開校してみると、ほとんど赤字です。(不正経理が明らかになった)山梨の健康科学大学のケースも、文科省は見抜けなかった。チェックが甘すぎます。こういうこともあって、定員割れの大学が40%を超えているんです。こういう大学は赤字がずっと続いていく。企業でいえば、「バンザイ」。倒産ですよ。近いうちに淘汰されるでしょう。
こういう現状を理解できないのが「大学人」と呼ばれる、エスノセントリズム(自文化中心主義)症候群にかかっている集団です。一体どこから手をつけたらいいのか分からない。経営に対して無知な人が、経営にあたっている。その結果、大学の再編が行われることになるでしょう。
最近の事例では、慶應が共立薬科大学を事実上吸収しましたし、関西学院大学も聖和大学(兵庫県西宮市)に対してM&Aをしました。こういうケースが、今後続出していくと思います。グローバル化が進む中で、競争できる大学にしていくためには、このような施策が必要なんです。大学の二極分化は大いにあることで、ダメ大学は潰れます。一方、生き残れる大学は、国際的スタンダードで評価される大学にならないといけない。