「日本はもう立ち直れない」 だから「海外で働こう」に賛否両論

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   「日本はもう立ち直れない」。こんな刺激的な問題提起を行い、留学して海外で働こうと呼びかけるブログが話題だ。筆者は、米シリコンバレーでコンサルタント会社を経営する渡辺千賀さん。経済が伸び悩む日本ではもはや成功体験ができないというのが理由だが、ブロガーらの間では賛否両論だ。

日本は、格差社会・誘拐多発のアルゼンチン型に?

渡辺千賀さんのブログエントリー
渡辺千賀さんのブログエントリー

   この刺激的なブログを書いた渡辺千賀さんは、東大工学部を出て、アメリカの名門スタンフォード大学でMBAを取ったという才媛。職歴も、三菱商事に勤めた後、マッキンゼーで戦略コンサルティングに携わり、2000年にシリコンバレーで起業、と華やかだ。

   そんな渡辺さんが日本を見る目は厳しい。

   自らのブログ「On Off and Beyond」の2009年4月27日付エントリー。20年ほど後の日本について、ベストケースでも、経済に活力がなく、観光に頼ってそれなりの生活を送るフランス型だと指摘した。最もありうるのは、格差社会が進んで金持ちが誘拐を恐れて暮らすアルゼンチン型。同国は、かつて日本のように世界の中核を担うと言われたからだという。そして、ワーストに挙げたのが、あまりの貧困に右翼の台頭を許してしまうケースだ。

   そして、日本ではもはや、高度成長期のような「成功体験」が味わえず、自信を持つことが難しいことを示唆し、「日本はもう立ち直れないと思う」と明言したのだ。そのうえで、「海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい」と促している。

   海外で働く場所として、渡辺さんは、中国でもインドでもベトナムでも、成功体験ができる「伸びてる場所」だという。自らが働くシリコンバレーは、ハイテク・ベンチャーが大学から育つのを目の当たりにして、そのダイナミズムに目から鱗が落ちたという。渡辺さんは、海外が嫌になれば、日本で就職すればよく、留学経験などがあれば優位になるとしている。そして、進路変更ができなくなる前に、「若い人に早く気づいて欲しい」と呼びかけている。

池田信夫さん「日本人の多くが『希望がない』と思っている」

   渡辺千賀さんのブログ日記は刺激的なだけに、コメント欄やほかのブログでも賛否両論が相次いでいる。

   アルファブロガーとして知られる小飼弾さんは、自らのブログ「404 Blog Not Found」で、「よくぞ言って下さいました」と賞賛した。自らの海外体験があったからこそ自信が持てたとし、回りもそうだと述べて、「海外を知らないと日本に留まる資格もない」ようになりつつあるとしている。自分ではなく日本に希望している人が多すぎるから逆に日本に希望がないとも指摘し、「もはや日本を支える人材を、日本国内だけで育てることが無理」と断言している。

   一方で、渡辺さんの日記内容について、反発するブロガーもいる。

   ソフトウェアエンジニアの北山朝也さんは、自身のブログ「フューチャーインサイト」で、「立派な志だと思いますが、はっきりいって大きなお世話ですよね」と漏らした。北山さんら20代後半の世代は、高齢者が増えたために割を食っているとしながらも、「勝つ」ことよりそんな社会を誇りを持って支える「撤退戦」も選択肢だとした。

   渡辺さんに近い考えは、経済学者の池田信夫さんが、自らのブログですでに述べている。反響が大きかったという2009年4月19日のエントリー「希望を捨てる勇気」だ。池田さんは、「2ちゃんねるで書き込みが今も続いており、私の話に『けしからん』ではなく、『その通り』みたいな反応になっています。日本人の多くが『希望がない』と思っており、なかなか深刻ですよ」と言う。

   ただ、渡辺さんが海外で働くよう呼びかけたことには、「留学はごく一部の人たちの特殊な解決策でしかなく、国民の大部分には解決になりません」と懐疑的だ。そのうえで、池田さんは、日本悲観論の主な要因は政治だと説く。

   「正社員と派遣などとの格差固定は深刻で、若者にとって会社は、かつてのようなコミュニティではなく、既得権を守るクラブでしかなくなっています。新卒で就職できない若者が増え、身分保障されていない人が近い将来、多数に上る恐れがあります。しかし、政府は、相も変わらずバラマキ政策を続けており、必要な雇用対策を打ち出していません。日本経済がよくなるいい材料がなく、国民は、大変なことになると思い始めています。マスコミも景気対策に批判的になったのは、これまでなかったことですよ。投資は先行きの見通しでするものなので、未来への確信がないと、経済は立ち直りませんね」

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