大学進学率は20%でいい  「下流大学」に税金投入価値なし
(連載「大学崩壊」第3回/消費社会研究家の三浦展さんに聞く)

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中学で習った基本的なことを忘れている

――ということは、大学は全体として定数・入学者を減らすべきで、大学自体の数ももっと少なくするべきだ、ということですか。

三浦   そうです。大学進学率は20%ぐらいでいい。現状では、学生に足し算、かけ算などの百ます計算をさせている大学もあるそうです。また、中学生と高校生に同じ問題を解かせたところ、中学生の方が成績が良かったという調査もあります。中学で習った基本的なことを高校になって忘れているわけです。そして大学でさらに忘れる。小中学校で習った読み書きそろばんの復習を大学でしているようでは、とてもそんな大学に税金を投入する価値があるとは思えません。若者にとっても高校から大学までの7年間は時間の無駄です。もっと他に若者を鍛えたり、技術を学んだりできるやり方を考えるべきです。
   大学の数は今750校ぐらい、短大を入れると1000を超えます。ここでは詳しく触れませんが、すべての授業をインターネットで受けることができるようにしたオンライン大学化を進めれば、300校くらいで十分だと考えています。

――ほかの80%の子どもたち、700校以上の大学・短大はどうなりますか?

三浦   現状では、意欲のない甘えた若者が大学を卒業しても、職につけていません。たとえ就職できても長続きしない。大学に行くことは、単に親へ依存する期間を延ばし、変なプライドを強くさせ、自立する機会を奪っているだけでしょう。料理人になりたいとか、ネイリストになりたいとか、少しでも興味ある仕事があれば、その技術を学ぶ道に早く入る方が、若者にとっても楽しいと思います。
   だから私は、高校をなくして、専門学校、短大、大学を含め「職業コース」として再編することを提案しています。中卒後に、大学へ行くための専門知識を履修するコースに進む生徒と、職業コースへ進む生徒に分かれる。両方のコースに同時に行く生徒がいても良い。その後、どちらのコースからも大学に進学できるが、進学率は20~30%でいいというイメージです。フィンランドでは私の考えに近いシステムになっています。
   もちろん、「大卒」という名目にこだわる人は親たちを含めかなりいるので、「職業コース」を「職業大学」と冠してもいい。職業大学は事実上専門学校のようなものです。
   現在の形骸化した高校教育では、何も習得していない生徒が非常に多い。それより専門技術を学んで手に職をつけられるようにしたほうがマシです。今は生徒1人に1年70万円、3年間で210万円の税金を投入しています。そのお金を専門学校に投入すれば子どもは無料で職業に直結した技術が学べます。財政的に負担増はありません。学生も、学費のためにキャバクラへバイトに行かなくて済むようになります。

――実際、今でも理容・美容師になる勉強をする大学があるなど、専門学校と大学の垣根がなくなりつつある傾向があります。

三浦   生徒のニーズを考えれば必然的と言えます。しかし、同じようなことを教える大学には助成金があり、専門学校にはない。不公平です。私が提案する職業大学のような大胆な改革は、大学経営者にも文部科学省にもできません。政治的決断が必要です。多くの若者たちに、無目的でなく、生き生きと青年期を過ごしてもらうことが重要ではないでしょうか。

三浦展さん プロフィール
みうら あつし 1958年生まれ。一橋大学社会学部卒。消費社会研究家、マーケティング・アナリスト。パルコや三菱総合研究所などを経て1999年にカルチャースタディーズ研究所を設立。現在も同研究所を主宰している。著書に「下流社会」(光文社新書)、「ファスト風土化する日本」(洋泉社新書y)、「非モテ!男性受難の時代」(文春新書)など多数。

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