5月3日、憲法記念日。新聞紙各紙は社説・社会面を中心に、日本国憲法に関する話題を特集したが、「9条」「集団的自衛権」を取り上げたところと、経済不況がらみで「生存権」に焦点をあてたところに分かれた。
産経、日経、読売は「集団的自衛権」解釈の見直し求める
「集団的自衛権」と「生存権」にわかれた新聞各紙
産経新聞の「主張」の見出しは、「脅威増大を見過ごすな 9条改正し国の安全を守れ」。国際情勢や安全保障環境が大きく変化している中、「問題の根幹は、自衛隊を軍隊と認めず、国家の防御を抑制してきたことにある。憲法9条がその限界を作っているのは明らかだ」と指摘、憲法9条の改正が急務であることを訴えた。
くわえて、ソマリア沖の海賊対策として、武器使用の基準を緩和した「海賊対処法案」については、あくまで海賊船を追い払う警察権の行使でしかなく、「逃走防止や人質奪還の武器使用は9条が禁じる『武力行使』と一本化しかねないと禁じられている。これでは脅威を排除できない」と述べている。また、日米の共同防衛を強く説き、「集団的自衛権」の憲法解釈の見直しを迫った。
日経新聞は「日本国憲法を今日的視点で読み返そう」という見出しで掲載した。集団的自衛権をめぐる憲法解釈の見直しが話題だ。日経新聞は01年の米同時多発テロ以来、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈の見直しを訴えている。社説では「現在ある非現実的な制約を除去すれば、国際社会の安定のために日本が能力の範囲内で活動できる場は広がる」と主張している。
読売新聞も同様に、海賊対策にあたる海上自衛隊のソマリア沖派遣や、北朝鮮の弾道ミサイルへの対処についての議論に触れ、「集団的自衛権は『保有するが、行使できない』とする政府解釈が、自衛隊の実効的な活動を妨げていることは明らかだろう」としている。そして、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が07年に制定されているものの、現在は憲法改正論議が失速していることを指摘。与野党ともに憲法審査会を始動させるべきだと主張している。
一方、毎日新聞の社説は、見出しを「もっと魅力的な日本に 軍事力の限界見据え」とした。「世界的なパワーシフトの中で、従来の日本の安全保障政策でよいのか、再考する必要がある」として、次のように述べている。
「北朝鮮が核とミサイル開発を手放そうとしない現状では、米国との同盟が日本の安全に不可欠なのは明らかだ。しかし、追随するだけでは日本は国際政治の脇役に追いやられ国益を守れない」
朝日、東京は「生存権」を取り上げる
朝日新聞の社説は、憲法25条の「生存権」を話題にした。見出しは「貧困、人権、平和を考える」。この経済不況の中、08年末には「年越し派遣村」で過ごした労働者がいたことに端を発した。社説では、昭和初期の過酷な労働環境と社会不安が戦争へと突き進んでいった「過去」を繰り返してはいけない、と強調する。そして、「一億総中流」時代は今や崩れかけ、漠然とした不安がある時代だからこそ、憲法25条とは正面から向き合う必要性があるとしている。
また、東京新聞も「生存権」を話題にした。朝日新聞と同様に経済危機、派遣村からの貧困層が急増していることを指摘した。雇用労働者の3分の1が非正規雇用であることを取り上げ、「富めるものはますます豊かに、貧しいものはますます貧しく」なる社会を危惧している。「人間らしく生きるための最低条件を保障すべきセーフティーネットもほころびだらけ」として、雇用や福祉制度の見直しは急務だと主張した。