メキシコ発の新型インフルエンザは、警戒レベル「フェーズ5」にまで引き上げられ、連日の報道を見る限り深刻さを増している。こうした状況に対して、1918年に大流行し、2000~4000万人の死者を出したともいわれる「スペイン風邪」との共通点も指摘されている。
「スペイン風邪」20代~30代の青年層に死亡者が多かった
豚インフルエンザが新聞各紙で報じられはじめたのは、2009年4月24日。世界保健機関(WHO)が豚インフルエンザにより、メキシコ国内で60人が死亡した可能性があると発表した。メキシコでは人への感染が疑われるケースが3月以降、数百件発生したという。その後も報告は続き、4月26日以降にはカナダ、イギリス、スペイン、オーストリア、イスラエルなど10か国(4月30日現在)で感染の疑いが確認された。
そうした中、WHOは4月29日に「大流行直前の兆候」となる「フェーズ5」と認定し、危機感が強まっている。
この新型インフルエンザは、1918年~19年に全世界的に広がり、2000~4000万人の死者を出したともいわれるインフルエンザ「スペイン風邪」に似ている、との指摘がある。「スペイン風邪」とは1918年3月にアメリカで出現し、ヨーロッパでは5~6月、日本でも11月に流行した。特徴は、死亡率が高い幼児や高齢者よりも、20代~30代の青年層に死亡者が多かったことだ。
こうした状況が、今回のメキシコのケースと重なる部分がある。たとえば、メキシコ国内ではすでに159人が死亡したと発表されているが、死亡者の平均年齢は39歳。かつ、流行した時期が3月以降であり、インフルエンザとしては季節外れであることも似ているというのだ。
世界的な大流行「今の時点では言い切れない」
だとすれば、新型インフルエンザがスペイン風邪のように大流行し、大きな被害を及ぼす可能性はあるのか。
東京都安全研究センターの増田和貴さんは「今の時点では言い切れない」と話す。というのも、上記のような状況が今のところ、あくまでもメキシコでしか確認されていないからだ。また、報告されている死亡の原因がすべて、インフルエンザによるものなのかが具体的にはわかっていない。年齢に関しても、メキシコは貧富の差も考えられるため、十分な医療が受けられなかった可能性もある。
そうしたことから、増田さんはスペイン風邪との類似に関して、「現状では全体を見なければ、感染力が強いのか、毒性が強いのか――どういった特徴があるのかはわからない」と述べるにとどまる。また、元北海道小樽市保健所所長の外岡立人さんもJ-CASTニュースに対して、「スペイン風邪のような大被害は発生しません。それほど心配はいらないと考えています」とコメントしている。
なお、日本ではまだ発症は確認されていない。警戒レベルにしても、動物から人に感染するウイルスを検出した段階である「フェーズ1」だ。国内で空気感染する可能性は現在、きわめて低い。ただ、ゴールデンウィークも控えており、いつ入ってきてもおかしくない状況であることには間違いない。前出の増田さんは「パニックにならないためには最新の情報を冷静に判断し、事実を理解する必要がある」と話している。