たくさんの人が並んでいる列に平気な顔をして割り込む。赤信号は無視。電車の中では大声で話す。若者たちのことかと思いきや、実はお年寄りで、ネットに実例などが書き込まれ、議論になっている。「高齢者だから許してもらえて当たり前だって思っている」と批判的な意見も多い。
「高齢者の方のマナーの悪さが気になる」
読売新聞が運営する投稿サイト「発言小町」に、お年寄りのマナー違反に関するトピ(お題)が2009年4月22日に立てられた。
通勤客で混雑する電車内で、あるお年寄り(女性)が堂々とお弁当を食べている上に、座席や床にボロボロとこぼしていた。近くにいたサラリーマンが見かねて、「食べこぼしていて迷惑ですよ、それにお弁当を広げて飲食するのはマナー違反です。荷物も膝の上か網棚に乗せたらどうですか」とやんわり注意した。
するとお年寄りは、
「あんたこそ音楽聞いてる機械から体に悪い電波出してるんじゃないよ! このハゲ!」
と突然、暴言を吐いたという。
サラリーマンは「機械は電源を切ります。あなたもマナー違反はやめてください」と落ち着いて対応したが、高齢者はわめき続けていた。
トピ主は、お年寄りの外見は普通だっただけに、豹変ぶりに驚いたそうだ。
反響が大きく、3日間で130本以上のレス(返答)が書き込まれた。「きちんとした高齢者の方も多いが、高齢者の方のマナーの悪さが気になる」「高齢者だから許してもらえて当たり前だって思うのでしょう」と、高齢者を批判するものがほとんどだ。
自分もマナー違反をしている高齢者を見た、といった書き込みもある。
一番多いのは、「バスの停留所や電車のホームで並んでいる列に平気で割り込んでくる」という順番待ちに関するもので、ほかにも「優先席で携帯電話を堂々とかけている」「スーパーマーケットで使ったかごを元の場所に戻さない」「突然、暴言を吐かれた」などがある。
「Yahoo!知恵袋」でも、高齢者のマナーが悪いのはなぜか、という質問が09年2月3日に書かれている。電車の中でお年寄り(女性)数人が、知り合いが死ぬとか死なないとか、他人がいるところでするべきでない話を、大声でしていたそうだ。近くにいた小学生の子供たちは静かに乗っていたのに、お年寄りはどうしてこうも言いたい放題なのか疑問に思っている、というのだ。
高齢者の犯罪が年々増えている
赤信号を無視して渡ったり、信号がなくても道路を横断する、といったお年寄りのマナー違反が目立つのはなぜか。
ある介護ボランティア団体は、
「高齢者だから(ネットに書き込まれたような)マナー違反をするという根拠はどこにもない。違反する人は年齢に関係なくいる。お年寄りだから、というのはあまりに偏った意見だ」
と反論する。
前出の車内トラブルに関するレスで、あまりにひどい場合、「認知症気味じゃないか」という指摘や、「精神的変化など何か理由があるのでしょう」とお年寄りの側に立つ人もいる。また、大声で話すのは耳が悪いためで、周りがやさしい目で見てあげられなくなり、高齢者が生き辛い世の中になっている、という意見もあった。
また最近は、高齢者の犯罪が急増していることも問題になっている。
「2008年版犯罪白書」(08年11月7日発表、法務省)によると、自動車運転過失致死傷などを除く一般刑法犯で検挙された65歳以上の高齢者は年々増え、07年は4万8605人に上った。高齢犯罪者の増加の勢いは、高齢者人口の増加の勢いをはるかに上回るという。
同書によると、高齢犯罪者の特性は、(1)親族から疎遠となり、単身で経済的にも不安定な状態が多い(2)高齢期特有の心身上の問題点や疾病を抱えている場合が多い(3)再犯を繰り返している者が多くいる、などが挙げられる。
その対策として、高齢者の生活の安定を確立した上で、社会の中で孤立させることなく安らぎと生きがいのある生活を提供することが重要である、と綴られている。