首都の1病院だけで死者が63人以上にも――。メキシコの病院医師という人からこんな報告があったなどと、イギリスのBBC放送がサイト記事で紹介している。ほかにも同様な証言が寄せられているほか、インフルエンザの治療薬やワクチンは、効果がないと指摘されている。事態は本当に深刻かもしれない。
BBCの英文サイトに医師が報告
BBCのサイト記事
「私が働いている病院では、1日に3人から4人の患者が亡くなっています。それも、3週間以上こうした異常な状態が続いているのです」
現地時間で2009年4月27日付になるBBCの英文サイト記事「豚インフルエンザ、あなたの経験」。メキシコ国立健康研究所の呼吸器系疾患専門医というAntonio Chavezさんは、首都メキシコシティにあるこの病院での経験をこう報告した。
単純に計算すると、Chavezさんの病院では、これまでに63~84人以上が亡くなったことになる。新聞各紙によると、メキシコ政府は、豚インフルによる死者を149人と発表し、WHOが警戒レベルを「フェーズ4」に引き上げる事態になっている。もし事実なら、一つの病院でその半分ほどの死者が出た計算だ。Chavezさんは、「政府の発表より死者数はもっと多いのが真実だ」としている。
さらに、BBCの記事では、メキシコシティの最も大きな病院の一つで医師をしているというYeny Gregorio Davilaさんが、「死者の公式発表は20人ですが、本当の犠牲者数は200人以上にも上ります」と報告した。記事ではよく分からないが、犠牲者数は国全体を指す発生当初のものである可能性がある。前出のChavezさんの病院と同じかも不明だが、事実とすれば、政府発表はかなり抑制された死者数になる。
このほか、メキシコの地方都市在住という投稿者は、新聞ではこの都市の死者が2人としているが、病院で働いている人たちから聞いた情報では、医者や看護師を含め19人が亡くなったとしている。
BBCへの投書内容は、英デイリー・テレグラフ紙のサイト記事でも紹介されている。
病院スタッフらが次々に職場を離れている
BBCへの投書では、インフルエンザの治療薬やワクチンは、効果がないと指摘されている。
メキシコ国立健康研究所の医師というChavezさんは、「抗ウイルス薬やワクチンは、多量に使ってもまったく効果が期待できない」としている。また、別の医師のDavilaさんは、政府配布のワクチンは効果がなく、勤め先の病院で働いていたインターンの2人がワクチン投与にもかかわらず6日以内に豚インフルで亡くなったという。ワクチンなどが効かない理由ははっきりしないが、違う型のインフルエンザ対応のものだった可能性はある。
さらに、感染リスクへの恐怖から、病院スタッフらが次々に職場を離れているともいうのだ。Chavezさんによると、スタッフの多くが退職を選んだり、休暇を申請したりしようとしているという。
ただ、医師や看護師らは、懸命な治療を続けているようだ。Chavezさんは、「治療の甲斐なく20~30代の若い患者が次々に亡くなっており、病院の医療従事者の間で深い悲しみが広がっている」と明かす。また、Davilaさんは、「パニックを避けなければならないのは分かりますが、これ以上の死を回避するためにも本当のことを話す方がよいと思います」としている。
もっとも、メキシコシティの医師という人からは、メキシコのインフルエンザ対策はうまくいっており、近いうちに事態は収束するだろうという報告も寄せられている。
なお、BBCのサイト記事は、ブログ「Rails で行こう!」でも紹介され、300件ほどのはてなブックマークが付くほど関心を集めている。