日立グループ弱電事業に「大ナタ」 「総合電機」の看板下ろすのか 

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   未曾有の経営不振に陥っている日立グループが「解体」の危機に瀕している。本体の日立製作所のほか国内外に880社を擁し、鉄道車両やコンピュータ、原子力発電所から白物家電やパソコン、AV機器までを扱うが、「原点回帰」を掲げて弱電事業に「大ナタ」を振い、「総合電機」メーカーの看板を下ろそうというのだ。そのために、グループ企業への公的資金の導入も検討し始めた。

公的資金は「選択肢のひとつ」

   業績不振の大手企業に公的資金の資本注入を可能にする産業活力再生法改正案が成立したことを受けて、業績悪化が著しい電機業界は同法の活用を検討し始めた。すでに半導体のエルピーダメモリが500億円、AV機器大手のパイオニアが300億円の出資を希望するなど、いまや「頼みの綱」のような存在になっている。

   2009年4月1日に就任したばかりの川村隆・日立製作所社長が同20日の記者会見で、公的資金による資本注入について「いくつかの分野で検討している」と述べた。

   日立製作所広報部は、「公的資金の活用は選択肢のひとつで、事業分野もなにも決まってはいない」と話す。ただ、日立製作所の本体が資本注入することは否定しており、「(グループの)個々の法人の判断になる」としている。

   日立は09年3月期連結業績(米国会計基準)の最終損益が前期の581億円の赤字から7000億円の赤字になる見通し。世界的な景気悪化で、大型電機機器の「重電事業」からテレビやエアコン、冷蔵庫などの「弱電事業」まで、どれも売り上げが低迷している状況で、赤字幅を広げた。

「原点」である情報通信、電力、環境事業に傾斜

   変圧器の製作から起こった日立は2010年に創業100周年を迎える。未曾有の経営不振で川村社長は「原点回帰」を掲げている。「総合電機から軸足を移し、安定的な収益構造にする」とし、日立のこだわりでもあった「総合電機の看板を下ろす」と受けとめられている。

   「原点」とする事業は、情報通信システムと電力システム、環境や産業、交通システム、社会・都市システムで構成される「社会イノベーション事業」で、この事業への傾斜を深めて、より安定した収益事業の強化を図る。

   その一方で、弱電事業には「大鉈」を振うようだ。4月中旬には、三菱電機との共同出資の半導体子会社、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスとの経営統合が浮上。日立は「当社が公表したものではない」とコメントしたが、ルネサス社に公的資金を注入して再編するとのウワサまで流れた。

   また、09年7月には薄型テレビなどのコンシューマ事業グループを分社化することを決めており、白物家電を含めたコンシューマ事業全体を視野に入れた事業効率の向上に向けた組織再編を検討していくとしている。

   事業部門の責任と権限を明確化するため、独立採算による「カンパニー制」を徹底するというが、それも「切り売りしやすくするだけ」のようにも見える。

   なにしろ国内外に880社もある巨大グループだ。しかも、どの関連企業も規模が大きく影響力は小さくない。「解体」するにも時間がかかるが、業界を巻き込む大再編に進みそうだ。

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