韓国経済に復活の気配が出ている。ウォン安を背景に輸出が好調で、その主力は日米欧で苦戦が伝えられている自動車産業だ。一時は1997年のような通貨危機の心配や、「3月危機説」が報じられていた韓国経済だが、この復活はホンモノなのだろうか。
荷動きの増加は韓国だけ
韓国の輸出が好調だ。海運などに詳しい日本海事センターによると、2008年の年間の荷動きで、日本や中国、台湾などの輸出((荷積み分、北米航路)が軒並み減少しているにもかかわらず、韓国だけが増加した。08年2月と5月~10月の7か月で前年同月を上回った。
同センターは「ウォン安の影響が大きく、家電製品などの荷動きはよかった」と話す。
リーマン・ショックが起こった08年9月にはウォン安が行き過ぎたため、韓国金融当局がウォン買い介入を実施。「ウォン安政策、転換か」ともいわれたが、結果的には「低位安定」で輸出振興に大いに貢献したわけだ。
とりわけ自動車は好調を持続している。2009年4月15日付の聯合ニュース(YONHAP NEWS)は、現代自動車は3月にドイツでの販売台数が8010台を記録して、前年同月に比べて50.1%増加したと報じた。起亜自動車の販売台数も前年同月比45.0%増の4494台という。
ドイツでは1月から新車を買い換える個人に2500ユーロの補助金を支給する制度を実施している。こうした新車買い替え時の補助や税金の減免制度によって自動車産業を後押ししている国は少なくないが、こうした国への輸出を増やし、販売台数はフランスやイタリアでも伸びている。
ヒュンダイ・モーター・ジャパンによると、「北米も好調」という。高級セダン「ジェネシス」の投入や、ローンを組んでクルマを購入した人が失業や病気になった場合に車両を返却すれば残債が免除されるなどの販売促進プログラムが功を奏しているとしている。
もちろん、好調なマーケットばかりではない。たとえばロシア。ロシアは現代、起亜グループが「強い」市場だったが、世界的な景気の悪化で売上げを落として苦戦している。また、日本では政府が追加経済対策でエコカーへの新車買い替え時などの優遇措置を発表したが、「(韓国車は)重量税の減税対象でないことから、目下のところ日本向けの輸出を増やす計画はない」(ヒュンダイ・ジャパン)という。
内需乏しく「復活」は一時的?
好調だった荷動きも09年に入ってからややその勢いが低調になっている。日本海事センターは「(ウォン安効果がはがれた感じもあって)若干下がりぎみではあります。景気動向と実際の荷動きは半年ほどのタイムラグがありますから、それが現れたといえます」と説明する。
3月下旬あたりからウォンは上昇。4月になっても1ドル=1300ウォン台で推移している。また、世界的に荷動きが止まってしまったことも影響したようだ。
「底をついたという感じはありませんね」と、同センターはいう。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「問題点は、株価下落と外貨借り入れ。借り入れは返済しなければならないので、ウォン安がかえって負担になる場面もある。また韓国経済は内需が乏しいので、日本以上に輸出産業の影響を受けやすい。ウォンが上がれば輸出産業にとっては痛手。そのあたりがどうか」と話す。
韓国製品のメリットは安価なところ。「ブランド力のある製品が乏しいのも国際競争力の点からは弱い」(枝川氏)とも指摘する。
いまは韓国政府の、17.7兆ウォンの景気対策や政策金利の引き下げが効いていて、イ・ミョンバク大統領も強気だが、上昇ムードがこのまま持続するかは不透明だ。