米国の大手航空会社が、「1つの座席に体が収まらない人は2座席分チケットを買うように求める」という方針を相次いで打ち出している。肥満の乗客の隣に座った乗客からの苦情が、航空会社に対して相次いだのが原因だという。日本路線への影響はどうなのだろうか。
自分のスペースにはみ出しているという苦情が「数百件単位で」
米航空会社の日本路線への影響が注目されている(写真はイメージ)
米大手航空会社のユナイテッド航空は2009年4月15日、米メディアに対して、座席の運用について新たなルールを設けることを明らかにした。新ルールでは、満席状態の便で、隣の座席の乗客から「窮屈だ」との苦情が寄せられた乗客に対しては、その便の予約を取り消した上で、次の便で2座席分の購入を求めていく、というもの。
同社には、
「隣に座っている『サイズが大きすぎる人』が、自分のスペースにまではみ出してきている」
といった苦情が、毎年「数百件単位で」寄せられていたといい、今回の方針が09年1月に決定されたという。4月15日から、実際の運用も始まっている。
具体的には(1)シートベルトがきちんと締められない(2)座席と座席の境目にあるアームレストが降ろせない、といった場合に新たな方針が適用される。機内に空席がある場合は、席を移動するなどして2席分のスペースを追加料金なしで使うことができるが、満席の場合は、ビジネスクラスにアップグレードするか、その便の予約を取り消した上で、後の便で2席分の購入を求められる可能性があるのだという。
同社は、全世界で200か所以上の空港に就航しており、その中には国内の成田・関西の2空港も含まれる。日本-北米路線や日本-韓国路線が影響を受けるかどうかに関心が集まりそうだ。同社の日本地区の広報担当者に聞いてみると、
「今回のルールは、(今回のような措置が違法だとされた)カナダ以外のワールドワイド(全世界)に適用されます」
とのことで、やはり日本路線も影響を受けることになるようだ。
日本人の体格からすると、適用されるケースは少ない
実は、この方針を取り入れている航空会社はユナイテッド航空が初めてではない。例えば格安航空会社として知られるサウスウエスト航空は、この方針を1980年代から取り入れている。それ以外にも、最大手のデルタ航空やコンチネンタル航空が、すでにこの方針を導入しており、特にコンチネンタル航空は、日本語ウェブサイトにも「余分の座席が必要なお客様」という項目があり、
「コンチネンタル航空では、必要と認められた場合に、ご利用区間それぞれに対して追加分のお座席のご購入、アップグレートに応じていただけないお客様のご搭乗はお断りさせていただきます」
とクギをさしている。
一方、前出のユナイテッド航空の担当者は、
「日本人の体格からすると、アジアでは、それ以外の地域に比べて(今回の方針が)適用されるケースは少ないのでは」
と話しており、日本路線でルールが適用される回数は実際には多くはないとの見方だ。OECD(経済協力開発機構)の06年の調査でも、15歳以上で肥満の人の割合は米国では34.3%なのに対し、日本は3.9%で、韓国は3.5%。この担当者の見方を裏付けている形だ。
さらに、ブルームバーグが報じたところによると、前出のサウスウエスト航空の場合でも、実際に2席目のチケットを購入した乗客は、全体の2%に満たないのだという。
ルールを定める米航空会社が多いことは間違いそうだが、この方針がどこまで厳格に運用されるかは未知数だというのが実際のところのようだ。