6人が負傷した東京・麹町のクレーン転倒事故で、クレーンのアーム部分に取り付けられていたクレーン所有会社名が入ったプレートが事故直後に取り外されていたことがわかった。その経緯は明らかになっていないが、トラックに閉じ込められた乗員の救助活動が続いていた最中でのことだけに、批判を呼びそうだ。
アーム部分についていたプレートがなくなる
事故から1時間半後の現場。アーム先端に「HITACHI」の白いプレートが付いている
事故が起こったのは2009年4月14日11時10分ごろ。マンション建設現場で作業中のクレーンがバランスをくずし、6車線ある国道20号線(新宿通り)の3車線をふさぐ形で転倒。通行中のトラックや歩行者が下敷きになり、計6人が重軽傷を負った。工事は東亜建設工業(東京都千代田区)が請け負い、事故を起こしたクレーンは大洋基礎(同中央区)が所有していた。
J-CASTニュースで確認出来た限りでは、日本テレビが事故の様子を最も早くヘリから生中継し、事故から20分後の11時30分の段階で、現場に横たわるクレーンの様子が映し出された。約28メートルあるアーム部分の先端部分には、クレーンメーカーの「HITACHI」の文字があり、それから少し下の部分には、クレーンの所有者を示す「大洋基礎」と書かれたプレート状のものが取り付けられていた。
ところが、そのわずか10分後の11時40分の中継映像では、確認出来るのは「HITACHI」の文字だけで、「大洋基礎」の文字が書かれたプレートは確認できない。何者かの手によって、取り外されたとみられる。
なお、この段階では、レスキュー隊による懸命の救助活動が続いていた。プレート取り外しから30分後の12時10分の段階で、J-CASTニュースのカメラでも、少なくとも2人がトラックの中に閉じ込められているのを確認している。また、東京消防庁が、負傷者6人が病院に搬送されたことを現場で発表したのは、12時45分頃だ。
台湾の中華航空機炎上事故が似たケース
実は、これと似たケースが07年にも起きている。台湾の中華航空機が07年8月20日、那覇空港(沖縄県)で炎上事故を起こし、事故機の残骸には、機体側面の「CHINA AIRLINES」という表記などが焼け残った。ところが、中華航空は翌8月21日には、社名や垂直尾翼のロゴを塗りつぶしたのだ。国交省の航空・鉄道事故調査委員会は「事故調査に影響はない」として同社の作業を許可したものの、航空関係者からは「安全性向上に取り組む方が先なのでは」などと疑問の声があがっていた(中華航空側は「国際慣例に従った」と説明)。
救助活動が行われている最中の「名前隠し」ともとれる行動なだけに、批判の声があがる可能性もありそうだ。
大洋基礎は、J-CASTニュースに対して、
「J-CASTニュースからの取材で、プレートが取り外されていたことを把握しました。調査したところ、協力会社(下請け)である「光北産業」(埼玉県新座市)の作業員が取り外したことが分かりました。取り外した時刻や経緯については、現段階では分かっていません」
と話している。