マンション価格の下落がとまらず「底なし」状態が続く中で、いま1億円以上の投資用物件が売れている。なかにはビルを丸ごと、20数億円もの物件にポンと投資する資産家も現れた。建設や不動産業者が資金繰りに苦労するなかで、個人が積極投資に動き出し、「あるところにはあるものだ」と不動産業者を驚かせている。
物件価格に比べると家賃はそれほど下がらない
マンション価格が下落の一途をたどっている中で、モデルルームに使用していた物件や、倒産しそうな建設業者や不動産業者が早めに現金化するために安く販売しているアウトレットマンションは、資金繰りに苦しむ不動産業界にあって、比較的好調に推移している。
ただ、そんなアウトレットマンション市場にも変化の兆しがある。アウトレット市場の参入者が急増したことや、在庫整理におおむねメドがついてきて、「再販市場は品薄感が漂ってきて、値上がり傾向が出てきた」(不動産販売会社の役員)という。
お客はまだ安い物件を求めているので、マンション販売業者としては「高値で仕入れたくない」。それもあって、曲がり角にきていることは確かなようだ。
そうした中で、1億円、2億円といった投資用マンションが売れ行きを伸ばしている。インターネットで不動産情報を提供する「楽待(らくまち)」を運営するファーストロジックは、「最近、アクセスが増えているのは投資用物件のサイトです」と明かす。
マンション価格は「底値」を思わせるほど下落して、「値ごろ感が出てきた」と考える人は少なくないのだろう。
物件価格の値下がりが激しいが、家賃はそれほど下がらない。つまり、利回りが下がっていないことも投資用マンションが売れている原因だ。株価も債券も相場が不安定なので損失が心配だし、預金は低金利で儲けが少ない。たとえば、東京・池袋、築20年の中古の投資用マンション(1棟売り、1億3000万円)でさえ、年10%近くの利回りがある。「20%近い物件も探せばあります」(不動産販売の関係者)という。
最近では、これまで法人をターゲットにしていたマンション販売業者が、個人資産家に狙いを切り替えたことも、投資用マンションが伸びつつある原因といえそうだ。