麻生首相「誤読記事」問題 産経や共同は、誤報を否定

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   麻生首相が「弥栄」を言い間違えたとの報道は、「誤報ではないか」と論議になっている。報道を巡って産経新聞がサイト記事を削除し、TBS幹部コラムが炎上する騒ぎにまでなった。報道した産経新聞や共同通信は、「誤報ではない」としているが、どうなのか。

「弥栄」を「いやさかえ」と読む

削除された産経サイトの記事
削除された産経サイトの記事

   マスコミから漢字誤読の指摘が相次いでいる麻生太郎首相。今度は、天皇、皇后両陛下の前で、漢字を言い間違えたと報じられた。

   このニュースは、共同通信が配信したほか、産経新聞なども独自に書いた。それによると、麻生首相は2009年4月10日、両陛下のご結婚50年をお祝いする祝賀行事で、繁栄を意味する「弥栄」について、「いやさか」と言うべきところを「いやさかえ」と言い間違えて祝辞を述べた。「両陛下の益々のご健勝と皇室のいやさかえを心から祈念し…」と発言したというのだ。

   産経サイトに載った記事では、「またやっちゃった?麻生首相」と麻生首相がうつむきながら右手で涙を拭うような写真が掲載された。

   さらに、TBS番組由来のサイト「WEB多事争論」では、TBSの編集部幹部が、「麻生首相は三権の長を代表してのお祝いの言葉でまたもや失態を演じました」とコラム欄に書き込んだ。そして、「宮殿の『松の間』で両陛下の前に一歩進み出て、紙を見ずに祝辞を述べたのですが、国のトップが国民の象徴に対してこれでは情けない限りです。歴史的な誤った日本語事例として残ってしまいました」と指摘した。

   ところが、ネット上では、歌舞伎の演目や神社名などに「いやさかえ」と読む例が見つかったとして、「誤報ではないか」と騒ぎになった。そして、産経が10日付のサイト記事を削除した。

   また、TBS編集部幹部のコラムには、「情けないのは果たしてどちらか」と批判が寄せられた。これに対し、この幹部は、「実際に目撃したのはこれが初めてだったもので、少々きつい物言いになってしまいました」「『歴史的な誤読』というのは、誤りだったようなので撤回します」などとかわした。

   しかし、このTBS編集部幹部に対しては、なぜきちんと謝罪しないのかと批判が集まり、コラムのコメント欄が炎上。この幹部はその後、コラム内で、「礼を失しました。訂正しお詫びいたします」と謝罪文を付け加えた。

「辞書を見ても、『いやさかえ』という表記は載っていない」

   これに対し、産経新聞社の広報部では、TBS編集部幹部とは認識が違い、記事について「誤報とは考えていません」とコメント。ただ、削除したことについては、「文脈上、『いやさか』と読むのが適当でしたが、古語等では『いやさかえ』とも読むとの指摘もあり、誤読として長時間アップする原稿かどうかとの判断のもと、アップ時間を区切らせていただきました」としている。

   また、共同通信社の用語委員長は、配信記事は「誤報ではない」と言う。

「広辞苑や手元のいくつかの辞書を見ても、『いやさかえ』という表記は載っていないからです。また、ご本人の公式サイトで『いやさか』と使っており、首相はこのことを認識しながら言い間違えたと判断しました」

   記事の訂正、謝罪も考えていないという。

   確かに、「広辞苑」や「日本国語大辞典」など一般的な国語辞典を調べると、「弥栄」について、「いやさかえ」との読みは載っていない。「いやさか」だけだ。ほかの例では、「遺言」は、広辞苑なら、「ゆいごん」のほかに「いごん」「いげん」も併記してある。「いやさかえ」は、一般には使われていないようだ。

   一方、麻生太郎首相の公式サイトを見ると、靖国神社について書いた2006年8月8日付の論文で、「靖国にいやさかあれ」などとタイトルを付けている。

   とすると、「いやさかえ」という読みは間違っているのか。それとも、皇室の儀式など特別なケースでは、この読みを使うのだろうか。

   宮内庁の広報担当者は、「辞書では、確かに『いやさか』としか出ていないですね。それ以外聞かれても、お答えしようがない」と困惑した様子だ。

   文化庁の国語調査官は、こう話す。

「一般的に使われるのは『いやさか』で、その方が自然です。『いやさかえ』が歌舞伎の演目にあるとすれば、江戸時代までは使われていたとも考えられます。皇室で使うかどうかは分かりませんが、歴史的なものには使われる可能性はあるでしょうね」
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