「マスコミのそういう考えが間違い」
議題は多岐にわたり、さまざまな視点から問題点が挙げられた。複数の医師からは、これまで医師は「善意と体力」で乗り切ってきたが、最近の勤務医不足や訴訟不安の増大で限界のところまで来ていると悲鳴が上がった。マスコミが叩きやすい医師側を安易に批判してきたことも、医療崩壊の一因だとする指摘もあった。一方で、患者団体からは、患者の顔も見ずに治療の話をする医者がいる、医者の目線が高く患者の声を聞こうとしていない、との批判もあった。
シンポは2部構成で、2時間30分にわたって議論が続いた。特に結論めいたものをまとめることは無かったが、さまざまな立場の意見をひとつの場で交わすことの大切さを確認した。
シンポ後には、パネラーたちによる記者会見もあった。パネラーに厚生労働省関係者がいなかったことについて、男性記者が「雑談では意味がないのでは」「それでは100年経っても(状況は)変わらない」と質問した。すると、千葉県がんセンターのセンター長も務めた竜崇正さんが「マスコミのそういう考えが間違いだ」「(役所に)お願いする時代は終わっている」と反論し、現場の声をもとにした抜本的な改革の必要性を改めて訴える一幕もあった。
同会は、パネラーら147人を発起人として発足、さまざまな団体や個人が緩やかに連携する形を考えている。この日のシンポを皮切りに活動を本格化させ、今後も各地で同様のシンポを開くなどして、情報の発信や収集を続ける予定だ。
医療崩壊は目に見える形で影響が出始めており、医師不足に伴い病院が閉鎖されるニュースが相次いでいる。4月に入ってからも、沖縄県で、医師らの退職意向により骨髄県内移植が困難になるという事態が報じられた。共同代表の大谷さんは、「患者や現場の医師だけでなく、税金を医療にどう使うかを考えるには市民、医療に関心をもつ『志民』の力が必要だ」「いろんな人の心・意見を吸い上げ、流れを変えたい」と話している。