さまざまな立場から智恵を出し合って医療崩壊を食い止めようと、患者団体や勤務医、開業医、学生、マスコミ関係者らが「医療志民の会」を立ち上げた。2009年4月11日、東京都内で設立シンポジウムを開き、「現場や市民の声を反映させる」ことの大切さを訴えた。参加者らの報告から、医療崩壊は加速している、という危機感が浮き彫りになった。
お金なく「静かな自殺」選ぶ人も
医療崩壊の実態と解決策について話し合った、「医療志民の会」の設立シンポジウム=2009年4月11日、東京都千代田区の学術総合センターで
シンポジウムには、著書「医療崩壊 『立ち去り型サボタージュ』とは何か」で早くから「医療崩壊」に警鐘を鳴らしていた、虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長ら15人がパネラーとして参加した。小松部長のほかに、看護師やがん患者団体関係者、医学生、大学教授らが顔をそろえた。司会は、フジテレビの黒岩祐治・解説委員が務めた。会場には、約400人が集まった。
シンポジウムの冒頭近く、WBC日本代表だったプロ野球横浜ベイスターズの村田修一選手のメッセージが読み上げられた。村田選手は、息子が早産で生まれ、NICU(新生児集中治療室)が不足している実態に直面した経験などを報告した。
「志民の会」の共同代表で、パネラーとしても参加した、元白血病患者の大谷貴子さんは、「金も医者も足りない」現状を訴えた。がん治療にお金がかかり過ぎるため、家族に金銭的負担を与えないよう治療をしない「静かな自殺」をする人たちが出ている、とも指摘した。大谷さんは、全国骨髄バンク推進連絡協議会の会長でもある。
また、小松部長は、現在の医療行政は「現場の人間の考えを知ろうともしていない」と批判し、医師会改革や厚生労働省に情報開示を迫ることの大切さを訴えた。医師側に対しても、患者からの信頼を得るためピアレビュー(同僚評価)の導入が必要だと主張した。