DV全体の1%、実際はもっと多い?
逆DVのケースは、ほとんどの調査でせいぜいDV全体の1%に過ぎない。それ以外は、夫から妻への暴力だ。しかし、内閣府の08年の調査によると、「どこ(だれ)にも相談しなかった」は、女性が53.0%なのに対し、男性は77.2%もおり、実際の被害者の割合は、もっと多いようだ。
交際相手から暴力を受ける「デートDV」の場合は、横浜市や神戸市が高校生や大学生に行ったアンケートで、男性の3割もが女性から暴力を振るわれたと答えている。これは、J-CASTニュースで2008年5月7日に報じた。
なぜ、逆DVのケースが起こるのだろうか。
離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、逆DVについて書いた情報サイト「オールアバウト」の記事で、相談は少なからずあるとしたうえで、そこで見られる2つのパターンを指摘する。
1つは、「妻自身にアルコール依存などの何らかの問題がある場合」だ。結婚などの環境変化でストレスがたまり、飲みすぎて自制できなくなり、暴力に走る。
その一例が、産経新聞が09年3月29日付記事で報じた刺殺事件だろう。自宅で夫(45)を包丁で刺して殺したとされた元ホステスの女(38)は、大阪地裁で25日にあった公判で、酒を飲んだらわけが分からなくなって犯行に及んだと証言した。犯行時は、夫の仕事が長続きしないことなどをとがめていた。この女は、同棲していたときも、寝室で寝ないことに腹を立てて夫を刺しており、服役後に暴力が激しくなって、夫の耳が変形したほどだったという。
岡野さんは、2つ目のパターンとして、「カップルの相性」を挙げる。
それは、おとなしく尻に敷かれる羊か下僕のような夫と、オオカミのように攻撃的で女王様のような妻のケースだ。今で言う「草食男子」と「肉食女子」に多少似たケースかもしれない。妻がご機嫌ななめなのに、口数の少ない夫が黙っていると、それが気に入らなくてさらにキレるというのだ。
最初に挙げた妊娠7か月の妻のケースは、もしかしたら、このカップルの相性だったのかもしれない。