21世紀の地球は「寒冷化」? 「温暖化懐疑論」が台頭

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   環境問題を考えるとき、「地球は温暖化が進んでおり、その『犯人』は、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス。従って、CO2を減らすための政策を推進することが重要だ」という考え方が「定説」だとされてきた。ところが、「実は気温は下がっている」などとする異論も少なくない。政府が地球温暖化対策を骨子とした「グリーン・ニューディール」政策を進めるなか、世界的にも、公然と異論を述べる動きが加速しているのだ。

「懐疑本」が続々登場、新聞記事も寒冷化指摘

   今となっては、一般に「通説」だとして受け止められている、「進行しつつある地球温暖化の主な原因はCO2だ」という説を主に唱えているのが、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」だ。IPCCは、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が共同で1988年に立ち上げた機関で。世界中の科学者から気候変動に関する論文を集め、2500人にのぼる専門家の査読を経て報告書にまとめている。

   IPCCが2007年に発表した第4次報告書では、地球上の平均気温は21世紀末までに1.8~4度程度上昇すると見込んでいる。同報告書では、温暖化の議論では「CO2以外にも、太陽活動の変化など、他にも気温上昇の要因がある」といった指摘があることを踏まえ、

「温暖化について、太陽活動は、CO2の10分の1程度しか関係していない」
「太陽活動の低下によっておきる寒冷化の問題は、数百~数千年という長期的な視点で考える必要がある」

などと論じている。

   それでも、「懐疑論」は、かなりの盛り上がりを見せている。ここ1年を見ただけでも、「『地球温暖化』論に騙されるな! 」(講談社)、「地球温暖化論のウソとワナ」(ベストセラーズ)、「正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために」(誠文堂新光社)といった、「懐疑本」が、続々と登場している。その論旨は

「地球温暖化を訴える動きは、単なるプロパガンダ」
「地球はむしろ寒冷化に向かっている」
「試算のモデルが信用できない」

といった、これまでにも論じられてきた内容なのだが、いずれもアマゾンでの書評欄を見ると、5点満点中、5~4点の評価を受けており、かなりの支持を集めている様子だ。

   国外でも状況は同様で、日本経済新聞が、2月2日の紙面で「地球の気候 当面『寒冷化』 自然変動が温暖化抑制?」という記事を掲載、地球の平均気温が

「98年をピークに、この10年間は横ばいないし低下し、2008年の気温は21世紀に入り最も低かった」

と指摘。「懐疑論」に半ば「参戦」した形だ。また、09年2月には、読売新聞の夕刊が、温暖化「懐疑論」と「擁護論」との意見を紹介する連載を掲載してもいる。

地球上の気温は2035年に最も低くなる?

   論争は、学会の場でも白熱している。08年5月に千葉市で行われた「日本地球惑星科学連合大会」では、3日間にわたって「地球温暖化問題の真相」というセッションが開かれ、

「太陽の活動が弱まるため、地球上の気温は2035年に最も低くなる」

といった「温暖化懐疑論」が披露された。世界的にも、この傾向が加速している。09年3月には、米保守系のシンクタンク「ハートランド研究所」がニューヨークで「地球温暖化: かつて、本当に危機だったことがあるのか?」と題したシンポジウムを開催。科学者、エコノミスト、政治家、など800人が参加した。この800という数は、08年の第1回目の会議に比べて、2倍近い数なのだという。

   参加者は、

「1977年に始まった温暖化は、すでに終わっており、地球は寒冷化に向けての新たな段階に入っている」
「第2次大戦以来の70年のうち、直近の10年を含む50年で、地球の気温は下がっている。二酸化炭素の濃度は上がり続けているにもかかわらずだ」

といった議論を次々に展開。特に注目されたのは、基調講演に現れたチェコのクラウス大統領だ。同大統領は、以前から「懐疑派」としても知られ、09年2月の世界経済フォーラム(ダボス会議)の場でも、

「地球温暖化というものが存在するとは思わない。そんな統計的データは見たことがない」

などと主張、議論を呼んでいた。今回の基調講演の場では、この主張がさらにヒートアップ。

「私がこれまでに会った『心配性』の人々は、気温にも、二酸化炭素にも、仮説を競うことにも、そして市場の自由にも興味はない。彼らの関心事は、ビジネスと、彼らの利益だ。そしてこれらは、政治家の手助けによってもたらされている」

とまで述べ、厳しい調子で「擁護派」を批判した。

   一方、「IPCC擁護派」も黙ってはいない様子で、東北大学や海洋研究開発機構などの学者が「懐疑派バスターズ」を結成。「地球温暖化問題懐疑論へのコメント」と題した、約60ページに及ぶ「懐疑論」への反論文章を掲載している。環境専門誌の「日経エコロジー」09年2月号でも、「『温暖化懐疑論』に答える」という9ページにも及ぶ特集が組まれており、「懐疑論」に見られる主な論点4つへの反論を試みている。

   この議論の「着地点」が見えそうもないあたり、気候変動を予測することの難しさを浮き彫りにしているとも言えそうだ。

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