地球上の気温は2035年に最も低くなる?
論争は、学会の場でも白熱している。08年5月に千葉市で行われた「日本地球惑星科学連合大会」では、3日間にわたって「地球温暖化問題の真相」というセッションが開かれ、
「太陽の活動が弱まるため、地球上の気温は2035年に最も低くなる」
といった「温暖化懐疑論」が披露された。世界的にも、この傾向が加速している。09年3月には、米保守系のシンクタンク「ハートランド研究所」がニューヨークで「地球温暖化: かつて、本当に危機だったことがあるのか?」と題したシンポジウムを開催。科学者、エコノミスト、政治家、など800人が参加した。この800という数は、08年の第1回目の会議に比べて、2倍近い数なのだという。
参加者は、
「1977年に始まった温暖化は、すでに終わっており、地球は寒冷化に向けての新たな段階に入っている」
「第2次大戦以来の70年のうち、直近の10年を含む50年で、地球の気温は下がっている。二酸化炭素の濃度は上がり続けているにもかかわらずだ」
といった議論を次々に展開。特に注目されたのは、基調講演に現れたチェコのクラウス大統領だ。同大統領は、以前から「懐疑派」としても知られ、09年2月の世界経済フォーラム(ダボス会議)の場でも、
「地球温暖化というものが存在するとは思わない。そんな統計的データは見たことがない」
などと主張、議論を呼んでいた。今回の基調講演の場では、この主張がさらにヒートアップ。
「私がこれまでに会った『心配性』の人々は、気温にも、二酸化炭素にも、仮説を競うことにも、そして市場の自由にも興味はない。彼らの関心事は、ビジネスと、彼らの利益だ。そしてこれらは、政治家の手助けによってもたらされている」
とまで述べ、厳しい調子で「擁護派」を批判した。
一方、「IPCC擁護派」も黙ってはいない様子で、東北大学や海洋研究開発機構などの学者が「懐疑派バスターズ」を結成。「地球温暖化問題懐疑論へのコメント」と題した、約60ページに及ぶ「懐疑論」への反論文章を掲載している。環境専門誌の「日経エコロジー」09年2月号でも、「『温暖化懐疑論』に答える」という9ページにも及ぶ特集が組まれており、「懐疑論」に見られる主な論点4つへの反論を試みている。
この議論の「着地点」が見えそうもないあたり、気候変動を予測することの難しさを浮き彫りにしているとも言えそうだ。