証券会社のお客に対するセールスが活発になってきた。「暴落説」が漂っていたなかで、多くの上場企業が決算を迎えた3月末を乗り越えて、東京株式市場の日経平均株価は終値で9000円台に迫ってきた。小刻みな値動きを繰り返しているものの大きな下落はなく、「大底を打った」とみている証券関係者も少なからずいる。上昇機運が高まって、「いまが買いごろ」と証券会社からの電話やメールが鳴り響き始めた。
円安100円台 米景気の悪化も遠のく
ちょうど1か月前の2009年3月10日、日経平均株価は年初来安値の7021円28銭をつけた。「7000円割れ」を目前に、一部のエコノミストは「5000円台もある」と悲観的だった。
ところが、3月23日には8000円台に回復。その後もじわじわと上昇したり、利益確定売りで反落したりを繰り返してはいるが、上昇基調にある。09年4月10日の終値は、前日比48円05銭高の8964円11銭。ある証券マンは、「一気に(上昇)とはいかないが、このまま右肩上がりになっていく」と、期待を込めて相場をみている。
気がつけば、この半月で1000円超も急上昇した株価。この間、外国為替はドル円が一時1ドル100円台に乗るなど、円安が進展。それに伴い、輸出関連株もやや株価を戻した。また、いまなお自動車メーカーの動向など不透明感があるが、米景気の悪化に歯止めがかかったとの観測が広がったことも株価にはプラスに働いた。
3月10日が「大底」だったのか――。第一生命経済研究所の主席エコノミスト・島峰義清氏は「いったんは大底を打ったと考えています」という。
政府の景気対策や株価対策が充実して、アナウンス効果を含めて奏功しそうなことや、アジアを中心に生産活動が底入れの兆候を明確にしつつあることで、「09年後半からはプラス成長に戻ると期待されています」と話している。
この機に乗じて、証券会社は個人投資家の投資ムードを盛り上げ、売買につなげようと、電話やメールによる積極セールスに転じている。
証券会社のセールスは金融商品取引法の施行で、投資家への説明責任が厳しく問われるようになったため、具体的な銘柄をあげて、投資を勧誘することがむずかしくなった。それもあって、投資セミナーや勉強会の開催などを通じた情報提供に切り替えて対応、個別セールスを控えてきた。