総量規制で増える「貸しはがし」「貸し渋り」
2006年12月に公布された改正貸金業法は、10年6月までに完全施行することになっているが、金融庁は当初「公布日からおおむね3年後」を目標にしており、「総量規制」はいわば、その仕上げにあたる。
日本貸金業協会の調べによると、貸金業者に既存の正常顧客の中に「年収の3分の1」を上回る利用者がどのくらいいるか聞いたところ、貸付残高5000億円超の大手貸金業8社のうち、「25%超~40%が抵触する」との回答が3社、「60%超が抵触する」との回答が4社あった。
一方、利用者側に同じ質問をしたところ、「年収の3分の1を上回って借りている」と答えた利用者が44%いたことがわかった。
総量規制の導入を見据えて、貸金業者の中にはすでに与信の見直し、具体的には利用限度額の引き下げや、新規借り入れの抑制などの措置に動きはじめている。つまり、法律によって「貸しはがし」や「貸し渋り」がはじまっているわけだ。しかも、景気悪化で借り手の給料が増える見込みが少ないことから、今後、いま以上に赤字を増やしたくない消費者金融は利用者の選別の目をさらに厳しくするだろう。
金融庁の多重債務者問題懇談会に出席する、ある委員は、改正貸金業法が景気のよいときにつくられたもので当時と環境が大きく違う点や、「(総量規制が年収の3分の1であることの)根拠がよくわからない」と指摘。また、ある弁護士は「本来、与信判断は各社別々の裁量があるもの。それを年収の3分の1にあわせてしまえば、これは実質的に個人を格付けすることになってしまうし、行き過ぎた管理強化にほかならない」と、導入反対の声がにわかに高まっている。
消費者金融で借りたお金を生活費に充てているケースは少なくなく、「年収の3分の1」に借り入れを制限すると、そうした人が「ヤミ金」で借りることになる。そうなると、法律本来の意味がなくなるばかりか、「ヤミ金」を喜ばせるだけになる。