ルポ・ハローワーク 「求職中」の若者に希望はあるのか

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   東京都千代田区にあるハローワーク飯田橋や「東京しごとセンター」には仕事を求める若者が詰めかけていた。5か月で30社、すべて落ちた男性、「面接まで行けば良いほう」と漏らす女性…。状況は想像以上に厳しく、「当たらないクジを引いているみたい」と漏らす人もいた。

5か月で30社応募、すべて落ちた

   2009年4月7日。仕事を求めてここに出入りする若者たちの「いま」を取材した。

   IT系の会社で仕事をしていたという男性(26)は、「IT業界の仕事が合わなかった」こともあって退職して半年。活動を始めて5か月で30社の企業に応募したが、就職できなかった。

「最初は事務職志望だったのですが、えり好みする場合ではないので営業職も受け始めました。ただ、厳しい状況には変わりないです。求人が2人のところに300人の応募があるなんて例はザラですよ」

今はコンビニでアルバイトをしながら、なんとかしのいでいる。

「我慢してます。とにかく生活を安定させたい。求職中の人はみなそう思っているんじゃないですか」

   女性も多い。派遣で一般事務をしていた女性(28)は、3か月前から就職活動中だという。当初は、前職の経験を生かせればと思い、事務系の求人に応募していた。しかし、現状は厳しい。

「面接まで行けば良いほう、というくらい書類選考のハードルが高いです。事務職だと資格を持っているのは当たり前。その上で経理の実務経験を求められるので」

   セミナーやカウンセリングを受けながら、幅広く就職先を探すことにしている。

「知り合いが勤めていた会社では、派遣の女の子は全員切られたと言っていました。セミナーを受けていても、周りには正社員でもリストラにあった、という方も多くいます。希望は、まだ見えてこないですね…」

   現在は専業主婦だという女性(27)は、以前飲食店で働いていた。この日は、母親(52)と共に初めて「東京しごとセンター」に来ていた。

   夫は結婚式場で正社員として働いているが、毎日朝8時から夜零時までの過酷な状況だ。4月から残業代もカットされる。

「それで転職活動中なんです。ただこの時代に不安なので、月2万でも3万でも家計の足しになれば、ということで相談にきました」

   女性の周辺でも、「周囲の20代の友達をみても、今はもう職を持っている人のほうが少ないくらいです」と明かす。母親は「いまは底。何とかジャンプしていきたい」と励ましていた。

就活とは「当たらないクジを引いているみたい」

「女性はまだ『明らかに女性を求めている仕事』があるので、男性より少し楽かもしれないです」

   こう話すのは技術系や事務系の派遣社員をしていた男性(30)だ。3か月前に短期派遣契約が切れ、就職活動中という。

「応募してみたら『女性しか採る気がない』という企業は結構あります。男性としては厳しいですよね」

   さらに、募集している企業について

「今は『上か下か』、しかないんです」

と表現する。

   どういうことかというと、「上」というのは経験者採用。4、5年の実務経験を求める企業が多い。ただ、

「そんな人はとっくに正社員で働いているだろうと」

とため息混じりにこう話す。

   一方、「下」、というのはあやしげな、いわゆる「ブラック企業」からの募集。

「この時代に100人単位の募集、月給30万以上、未経験OKなどを売り物にしています。飛び込み営業とか金融会社とかが多いですね。あまり『甘いニオイ』を出す企業は逆に怖いです」

   求職中の人はそういうブラックの「ニオイ」を察知する能力がすごいそうで、変な「ニオイ」のする会社には誰もいかない。だからまともな会社の求人には応募が殺到する。

「実際の有効求人倍率はもっと全然低いんじゃないですかね」

それが実感だそうだ。

   求職の選択肢が少ない中で、今後の見通しはどうなのだろうか。

「派遣なら何とか決まるかなぁという感じです。コツコツとやろうと思ってます。ただ、本当に条件は厳しい。努力して決まる、というよりも『運』かな、というくらい。当たらないクジを引いてるみたいな感覚ですよね」

と言い、最後にこうつぶやいた。

「希望をもたないと、やってられないです」
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