「おたふく風邪」といえば子どもがかかる代表的な感染症のひとつだ。だがこの病気、大人になってから罹る人も多いようで、しかも症状は「子どもより重症になる」という例も少なくない。
腫れが喉を塞ぐと窒息して死んでしまうことも
個人の人気ブログニュースサイト「HiroIro.com」の更新が2009年3月21日から1週間停止した。管理人のHiroさんは28日、「35才おたふく。そして入院へ…」というタイトルで、長女から「おたふく風邪」をうつされていたことを告白。「寝られず泣く」ほどの痛みで入院し、医師に「耳の下の腫れが喉を塞ぐと窒息して死んでしまうこともある」「これ以上腫れたら首を切開して管を通す」と言われたという。幸い手術をしなくて済んだようだが、2歳のとき以来、人生2回目の「おたふく風邪」で、「大人になってからのおたふくは相当キツイです」と明かしている。
「破裂しそうなほど腫れて痛かった」と話すのは、1週間前まで「おたふく風邪」にかかっていたという30代の女性だ。子どもから伝染したそうで、歯から耳まで「とにかく一日中痛かった」という。「すごく腫れて、口が開かなくなり物が噛めないほど。痛み止めも6時間で切れるし、ひりひりと痛かった。人前に出られないのも辛い」とその苦しみを語る。また、医師には「大人は通常子どもの倍くらい回復にかかるのが通常」と言われたという。
特効薬は存在しない
「おたふく風邪」は正式には「流行性耳下腺炎」といい、「ムンプスウイルス」による感染症。飛沫および接触感染で伝染し、耳の下やあごの下部分が腫れ、痛みや発熱を伴う。「ムンプスウイルス」を退治する特効薬は存在せず、おたふく風邪と診断されると、鎮痛剤が処方され、腫脹箇所を冷やすなどしながら安静にし、ウイルスが弱まるのを待つしか方法はないという。
SNSサイト「ミクシィ」にも「大人のおたふく風邪」なるコミュニティがあり、100人以上がメンバー登録されている。
「痛いし…顔はビッグだし、この辛さは『大人のおたふく』になった人にしかわかりませんよね!」
「大人になって感染するときついと聞いてはいましたが、予想以上です!」
と、「大人のおたふく」の辛さを吐露する書き込みが目立つ。
なぜ「大人のおたふく風邪」は症状が重いといわれるのか。複数の医療関係者によると、「一概に大人だから重症、とはいえないが」と前置きしたうえで、「感染すると、大人のほうがウイルスに激しく抵抗し、高熱や症状が出やすいケースがある」と話す。また、「合併症が子どもよりも出やすいため」とも指摘する。
思春期以降に感染した約20%の男性が「睾丸炎」、約7%の女性が「卵巣炎」を引き起こすそうだ。これが原因で不妊症になることはまれだというが、高熱や激痛が伴う。また、おたふく風邪患者の約10%が「無菌性髄膜炎」を併発する。治療が困難な「ムンプス難聴」を起こすケースもある。
侮りがたい病気だが、特効薬は存在せず、確実な予防には「予防接種しかない」そうだ。副作用のリスクを懸念する声もあるが「数%、微熱や軽度の耳下腺腫脹がみられるケースもあるものの、髄膜炎にまで発展するケースは0.1%未満とまれ」ということだ。