電子マネーの舞台裏はいまのところソニーの独壇場
6回の増資は、ソニーグループが主体となって引き受けてきた。なにしろ4700万枚ものカード発行枚数と12万2000か所の利用場所があるのだから、「撤退すれば、相当な混乱があるだろうし、ソニーやNTTドコモもそれによるイメージダウンを考えると、後には引けないとの思いがあったのではないか」(前出のカード関係者)と推察する。
しかし、ソニーにとって電子マネーは「成長分野」だ。カード発行枚数が増えれば、ICチップがはけるし、インフラ整備による端末設置料が入ってくる。普及するほど、メーカーとしてのソニーの利益につながる。
一方、エディに搭載されている非接触型ICカードの規格(電子マネーの基盤)は、ソニーが開発した「フェリカ」だ。この技術はエディのみならず、JR東日本のスイカや流通系のナナコ、ワオンなどに幅広く使われていて、日本国内ではもはや「デファクトスタンダード」にある。つまり、ソニー本体はエディ以外でも稼げるのだ。
一見、熾烈にみえる電子マネーだが、その舞台裏はいまのところソニーの独壇場といっていい。現状では競合といっても、買い物のエディと電車の乗り降りに使われるスイカなどは使い分けできるし、ナナコやワオンとはカード発行枚数で3500万枚以上の大差がある。
「頭打ち」がささやかれているが、競わすことで発行枚数も加盟店数も伸ばしていく余地がまだ十分にある。利用者にエディという選択肢を残すだけでも、増資して生かす価値があるというわけだ。